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障害者雇用を進める町工場の社長に聞く!子どもが将来「働く」ために今、大切にしたいこと

障害のある子ども達の「今の困難さ」についての情報は多くありますが、義務教育後の将来を見据えたリアルな情報というのはそう多くはないように思います。そこで今回、自閉症児9歳を育てる私は、ダイバーシティを進める町工場、川田俊介社長に障害者雇用で働く人たちの現状と、将来を見据えた障害のある子どもたちに大切にしてほしい育ちについて伺いました。

創業51年目、小田原市にある精密プレス加工・金型製作の町工場、有限会社川田製作所には障害者をはじめ、高齢者、女性、外国人など多様な年齢、特徴のある社員が働いています。障害者雇用は創業10年目から開始し、2020年現在は20名の社員のうち6名が障害者雇用です。障害の種類も様々で、聴覚障害1名、肢体不自由1名、知的障害1名、発達障害2名を雇用しています。

「将来の『働く』を見据えたとき、私達保護者にとって子どもを育てるうえでどんなことが大切になるでしょうか?」
と伺うと、川田社長は25歳のN君についてお話してくださいました。

数字が苦手なNくんのこと~苦手なことを理解する・周囲に知ってもらう~

▲実際に使用されているカウンター

N君は2014年に入社した、知的障害を持つ社員で、工場の現場で働いています。就業後は毎日作業日報を書くのですが、不良品の記載数字がどうしても合わなくて苦労しました。職場の仲間は、始めのうちは「ちゃんと書いてよ」という言い方で指導していましたが、よくよく話を聞いてみると、彼は数字を数えるのが苦手ということがわかりました。10までは数えられるのですが、その後が難しかったのです。そこで会社では5連のカウンターを購入し、今まで作業終了後に不良品を数えて数を記入していたものを、不良品が出た時点でその都度スイッチを押すという方式に変えました。そうすると、間違いがなくなったのです。今では他の社員もカウンターを使用しています。

 

―働く上で周囲が本人の苦手さを知っていること、その上で工夫をしていくということが働きやすい職場につながるのですね。

環境を整えることと、本人の力を育てることの大切さ

▲数字の練習に取り組むN君

会社側の工夫として環境を整える一方で、本人が自分自身で苦手なことを理解し、本人の力で乗り越えることも大切だと思っています。

―具体的にはどのようなことでしょうか。

N君は始め、他の人にはなかなか読み取れない数字を書いていました。しかし、製造業ではどうしても数字を書く必要があります。この部分については、会社側でカバーするより彼の成長を期待できないかと考えました。そこで本人と相談し、数字の練習用紙を買って、他の人が読めるものが書けるように数字の練習しようということになりました。N君はコツコツと練習を重ね、今ではみんなが読めるものが書けるようになったのです。

「素直さ」はどこからくるのか

彼を見ていると「素直さ」というのが働く上で本当に大切なものなのだと感じます。これは障害者雇用かどうかに関わらないことでもある気がします。彼が入社した当初は、何か失敗をしたり、できないことがあったりしたとき、周囲の人たちは「なんだよ」という感じで見ていたこともありました。しかしそんな時にも、彼は自分の失敗を人のせいにしたり、いじけてしまったりということがありませんでした。できないことや失敗はそれとして受け止め、自分にできることを取り組んでいったのです。その結果、周りの人たちにも認められるようになっていきました。

―そのような「素直さ」はどのように育まれると思われますか?

そうですね、個人の資質もありますし、それが子育ての中でどのようなことに起因しているかというとなかなか難しいですが、「自己肯定感」というものが大事になってくるのかもしれません。彼は決して自分自身を諦めていないと感じます。何かうまくいかないことがあっても、「自分でできることがある」と感じられるような成功体験をすることが、子どもの育ちの中で大切なのかもしれませんね。

▲有限会社川田製作所の皆さん

川田社長のお話の中で、「自分を諦めない」という言葉がとても印象的でした。私自身、「どうせ」「無理」という言葉を心で唱えたことが何度もあります。しかし、うまくいかないことがあったときも、自分の可能性を諦めずにいるということは、働く上でも、生きる上でも大切なことのように思います。環境を整える一方で、親も子も自分を信じて、今できる小さな一歩を重ねていきたいですね。

 

川田俊介社長 プロフィール


1970年 神奈川県小田原市生まれ。大学卒業後、システムエンジニアとして大手電機メーカーに就職。
2010年 父の創業した有限会社川田製作所に入社、副社長に就任。
2018年 経産省・ダイバーシティ経営企業100選を神奈川県西部で初めて受賞。
2019年 同社の代表取締役に就任。先代から40年以上、障害者雇用に取り組んでいる。

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執筆者プロフィール

雨野 千晴

1981年札幌生まれ。神奈川県厚木市在住。ADHD不注意優勢型当事者。

長男が2歳で自閉症スペクトラムの診断を受ける。小学校教員として10年勤続後、2017年に退職、フリーランスに。現在はコラム執筆、講師、イラスト制作など多動に活動中。2児の母。NPO法人ハイテンションスタッフ・あつぎごちゃまぜフェス実行委員長。
https://linktr.ee/amenochiharu

執筆者プロフィール

雨野千晴

1981年札幌生まれ。神奈川県厚木市在住。ADHD不注意優勢型当事者。

長男が2歳で自閉症スペクトラムの診断を受ける。小学校教員として10年勤続後、2017年に退職、フリーランスに。現在はコラム執筆、講師、イラスト制作など多動に活動中。2児の母。NPO法人ハイテンションスタッフ・あつぎごちゃまぜフェス実行委員長。
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