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学校が関係した複雑性PTSD? 先生の指導もトラウマに

私は算数・数学に「アレルギー」と言えるほどの苦手感を持ってきました。この強い苦手感について、カウンセラーに「トラウマ由来かもしれない」と指摘されることがあって…
今回は、私が算数・数学を苦手になった経緯と、それを乗り越えた経緯についてお伝えします。

■数式を目にすると頭にモヤがかかって…

私は学校の勉強は基本的によくできたのですが、算数・数学だけが極端に苦手でした。小学校6年のときに「国語が学年トップ、算数が学年で最下位、二教科平均でちょうど真ん中」という成績を叩き出して伝説になったことがあります。高校の頃には、泣きながら勉強した数学がなんと13点…

数式を目にすると、またたく間に頭にモヤがかかり、視野が狭くなる感じがするのです。そして頭がまったく働かなくなってしまう。算数や数学の授業中に異常な眠気に襲われて眠りこけてしまい、ただでさえ叱責されるのをよけいに叱責されることもありました。

私はこうした状態をずっと、発達障害の症状のひとつの算数障害だと思っていたのですが、30歳を過ぎて受けた知能検査では数の処理の能力はまったくもって普通だとわかり、首をかしげていました。

■カウンセラー「トラウマ由来かもしれない」

先日、この不思議な感覚のことをふと、私のトラウマ治療を担当してくれているカウンセラーの先生にこぼしたところ、「それはトラウマ由来のものかもしれない」と指摘されました。

トラウマがある人は、何かトラウマ記憶を刺激するものを見聞きすると自然に身体が緊張してしまう。緊張により呼吸が浅くなって脳に十分な酸素が行かなくなり、低覚醒(覚醒度が低い)の状態になると言われている。

これに該当すると思われる多くの人が「頭にモヤがかかる」「視野が狭くなる」「異常な眠気に襲われる」と、宇樹さんと似たようなことを言う… 先生はそう説明してくれました。

■小学校の担任からの理不尽な叱責

私には思い当たることがありました。小学校のとき、算数に関して担任に質問をすると、質問にちゃんと答えてもらえず、理不尽に叱責され、人格を否定するような罵声を浴びせられた記憶があるのです。

「ともかくそういうことになっているんだ。大人をからかって楽しいのか? 大人の言うことには従え! どういう育ち方をしたらそんなに性根の曲がった子になるんだ!」

この、算数の質問に際して私を罵倒した担任が誰だったのか、私は今でも思い出せません(トラウマを負った人にはよくある現象で、解離性健忘と言うそうです)。しかし、ほかの断片的な記憶と合わせて言動の特徴から推測するに、4年生のときの、私を虐待した担任だった可能性が高いと思われます。

彼女は何かと「大人の言うことには従え、大人には逆らうな!」と声を荒げる人でした。ときには暴力を用いて自分に従わせようとしていたので、彼女なら私からの算数の質問にも上記のように対応したとしてもおかしくありません。

思えば私は、なんとなく苦手だった算数を、あの罵倒をきっかけに「生理的にダメ」なほど苦手に思うようになった気がします。
私はのちに、彼女からの暴力と支配を一因としたトラウマ性の症状群を「複雑性PTSD」と診断されるのですが、ここからすると私の算数・数学アレルギーは複雑性PTSDの症状の一環と言えるのかもしれません。

■算数・数学との出会い直し

私は最近、思い立って算数・数学のおさらいをしています。いま中学レベルまで終わって、次は高校レベルに挑戦というところです。

おさらいを思い立ったきっかけは、プログラミング言語の学習でした。ライターとしての活動の幅を広げるために何か身につけられるスキルはないかと考えて、Pythonというプログラミング言語の学習を始めたのです。

すると、入門的な内容を進めるうちにわけのわからない数式が出てきて行き詰まるのです。調べてみると、ものすごく難しく見えるその数式がせいぜい中学レベルということがわかりました。

これは中学レベルぐらいわかっておかないとまずい、となって中学の数学を… と思ったのですが、そもそも算数からとても苦手だったので、いっそのこと小学校の算数からおさらいすることにしたのでした。

自分でおさらい用のテキストを買ってやってみると、驚いたことに、どうしようもなくつまずくようなところはありませんでした。テキストの解説がわかりづらいときはインターネットで検索し、わかりやすい解説を探して乗り越えることができました。

■先生が思ったような指導をしてくれない場合の対処法

あっという間に無事に中学校レベルまでの算数・数学を復習できて、思ったことがあります。いまの時代は、運悪く学校の先生と合わなかったときにも、ほかにたくさんの選択肢があるから苦手教科を乗り越えやすいのでは?

先生が理想的な指導をしてくれない場合にも、そこで我慢したり諦めたりする必要はありません。インターネットで検索をすれば、たくさんの解説や例題が見つかります。きっとその中で、自分に合うものが見つかるでしょう。

教育に関する考え方も、私が子どもだった30年ほど前と比べて大きく進歩していますし、いろいろなタイプの学習塾やテキストといった選択肢も豊富です。学習環境についても、タブレット端末での学習が広がってきていて、手書きでの学習が苦手な人でも学習に集中できるようになりつつあります。

■教科指導を子どものトラウマにしないためにできること

先生など、子どもに指導する側としては、指導方法によっては子どもが特定の教科の学習に関してトラウマを抱えてしまう可能性を念頭に、適切な指導方法について学んでいく必要があるでしょう。

また、一見して性格の問題でだらしなく見えたり反抗的に見えたりする子どもが、トラウマ性の症状に悩んでいる可能性もあります。

性格の問題を抱えているように見える子どもの状態が実は病気や障害の症状だった、ということはよくあります。スクールカウンセラーの先生や保健の先生など主導で、トラウマについてや学習モチベーションについてなど、研修を行うのもよいかもしれません。

加えて言えば、個人的には、小学校の学級担任制が問題の根源のひとつではと思っています。それぞれの教科をその教科専門でない先生が教えると、知識不足から適切な指導ができなかったり、学級担任としての関係性を指導に持ち込んでしまって不適切な指導になったりする場合もあると思うのです。

学校のシステムを変えるのには時間がかかるので、これからしばらくは学級担任制でいくしかないとは思いますが、先生の側としては、学級担任制の弱点をおさえたうえで対処していってほしいなと思います。

執筆者プロフィール

宇樹義子(そらき よしこ)

1980年生まれ。早稲田大学卒。ASD、複雑性PTSD。
2015年に発達障害当事者としての活動を始める。LITALICO発達ナビなどで連載開始。 2024年、日本語教師としても活動を開始。複数メディアで活動を続けながら、次の発信を模索中。
現在、発達支援×日本語支援の分野に興味津々。

【著書】
#発達系女子 の明るい人生計画
―ひとりぼっちの発達障害女性、いきなり結婚してみました

80年生まれ、佐藤愛 ―女の人生、ある発達障害者の場合

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