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発達障害という診断名がつくメリットとは

いつまでも咳が止まらず不安になり病院を受診したとします。

医師から「どこも悪くはないと思います。咳の原因はわかりません。しばらく様子をみましょう」と言われたら、凄く不安になります。

咳の原因が明確になると…

新型コロナ→PCR検査の結果、陽性反応!保健所に連絡だ!濃厚接触者もPCR検査だ!

インフルエンザ→リレンザやタミフルを服薬しましょう。学校は5日間お休みしましょう。

風邪→風邪薬を飲んで、家でゆっくり休養をとりましょう。

ということになり、次に何をしたらよいのかわかります。

これは、発達障害の診断と似ているような気がします。

 

■幼稚園、保育園の先生の言葉

私は幼稚園、保育園の先生方に職員研修する仕事をしています。保護者が子どもの様子を不安に思い、園の先生に「うちの子、もしかして発達障害なのでしょうか」と聞いてくることがあるそうです。

園の先生方は医師ではありませんから、「自閉症かもしれません」とか「注意欠如多動性障害かもしれません」などと言ってはなりません。

けれども

「長い目でみたらどうでしょう」「しばらく様子をみてはどうでしょう」

「子どもなんて、落ち着きがないものですから」

「どの子もこだわりや癇癪はありますから」

と言ったら?

明確なことを伝えてしまって、保護者が泣いたり怒り狂ったりするケースもあるため、このように曖昧にお茶を濁せば保護者との人間関係を崩さずにいられるかもしれません。

また、保護者は一瞬、安堵するかもしれませんが、他の子と比べて明らかに様子がおかしい我が子を見て、その原因がわからずますます不安になります。

そんなときは

「一度専門機関を受診してはどうでしょうか。」

と保護者の背中を押してほしいです。当然、保護者は自分から相談を持ち掛けたのにも関わらず、痛いところをズバリと指摘されてショックを受けますが、療育を受けたり、子育ての視点を変えたり、次の段階に進むことが出来ます。

■周囲からの理解を得られる

発達障害であることを気付かず、過度の躾による体罰、虐待に発展したり、育てにくい子のため、親子の間の愛着形成がされなかったり…。また虐待をされている%も健常児の4倍と言われています。

あいち小児保健医療総合センターの虐待の症例、44%が発達障害という報告です。

参考1:発達障害の理解と対応https://www.achmc.pref.aichi.jp/authorized/file/konwakai15/konwakai15_01.pdf

参考2: 杉山 登志郎「発達障害の子どもたち」講談社現代新書、P148、149

診断名がつくことで、親自身、「自分の子育ての仕方、躾の仕方が問題なんだ」と自らを責めることを止めることができます。また、我が子が集団行動がとれない、落ち着きがないことをむやみやたらに叱責することも減るのではないでしょうか。

親にとってもまた本人にとってもストレスが少なくなります。

■医師の診断というお墨付きを得られる

「授業中気が散ってしまうとき、本人に努力を求めるのではなく、座席位置を前にする、窓際に座らせないなど気が散らない環境を準備してほしい」などの要求を幼稚園、保育園、学校にお願いするときも…

保護者の意見だけで伝えると「あなたのお子さんだけ特別扱いは出来ません」と突き返されてしまうこともあります。たとえ、あからさまな態度はとられなかったとしても、心の中ではそう思われてしまっているかもしれません。

でも、医師の診断書というお墨付きがあれば、障害者差別解消法により幼稚園、保育園、学校側に合理的配慮も求めやすくなります。

ただし、定型発達の人がそれぞれ性格や個性があるように発達障害の特性も様々あります。

診断を受けたからと言って「自閉症の人は○○である」例えば「自閉症の人は新しい環境が苦手」、「数字が好き」など決めつけることのない視点も親にはまた必要だと思います。

 

 

 

 

 

 

 

執筆者プロフィール

立石美津子(たていし みつこ)

著述家
20年間学習塾を経営、現在は著者・講演家として活動。
自閉症スペクトラム支援士

『一人でできる子が育つテキトーかあさんのすすめ』
『はずれ先生にあたったとき読む本』
『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』
『動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな』
など著書多数

日本医学ジャーナリスト協会賞大賞受賞作『発達障害に生まれて(ノンフィクション)』のモデル
Voicy  https://voicy.jp/channel/4272
オフィシャルサイトURL https://tateishi-mitsuko.com/
テキトー母さんのすすめ(アメブロ) https://ameblo.jp/tateishi-mitsuko/

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