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「一口だけ」はプレッシャー?子どもの偏食、原因と関わり方

食べられるものが限られているけど、このままで大丈夫?

お弁当の中身がいつも一緒で、ダメなママだと思われていないかな?

お子さんに偏食があると、成長が心配になりますし、「子どもが食べられるものを食べさせてあげたい」と思っていても、周りの目が気になる時もあるでしょう。

頑張れば食べられるんじゃないか?という気持ちが強くなって、「1口だけ食べてみようよ」と声をかけることも多くなってしまいますよね。

でも、その何気ない一言が、子どもにますますプレッシャーを与えてしまうことも……。

今日は、子どもの偏食の原因をお話します。この記事を最後まで読んでいただくと、ご家庭での関わりのヒントが見つかるかもしれません。

 

子どもの偏食の原因って?

子どもの偏食には、様々な感覚過敏や周りの関わり方が影響していることがあります。このコラムではその原因を、3つに絞ってお話しします。

  1. 感覚過敏がある
  2. 不器用
  3. 食事の環境

原因1<感覚過敏がある>

「食事と関係している感覚過敏」と聞くと、味の「味覚」や、においの「嗅覚(臭覚)」、食感の「触覚」がイメージしやすいと思います。大人のわたしたちにも、苦手だと感じるものがありますよね。

でも、それだけではなく、見た目の「視覚」や音の「聴覚」なども、偏食の原因になることがあります。

例えば、視覚過敏がある場合は、食材や料理の色が違って見えると言います。わたしたちにとっておいしそうな彩りも、子供の目には食欲が減退してしまう色に移っている場合があるということです。

また、聴覚過敏がある場合、食べ物を噛んでいる音や、食器とフォーク、お箸などのカトラリーがあたる音がうるさく響くことで食事に集中できなくなる子もいます。

わが家の息子は、ワンプレートに盛り付けられることがとても苦手でした。息子の場合、それぞれの味が混ざることや、たくさんの料理が一気に目に入ってくることで、どこから食べはじめたらいいか分からないということがあったようです。

このように、偏食の理由には感覚過敏が関わっている可能性があります。

でも、子ども自身が感覚過敏を言語化することが難しいため、わがままだと捉えられる場合もあります。食事以外でのお子さんの感覚過敏の様子も観察してみましょう。

 

原因2<不器用>

発達障害やグレーゾーンのお子さんは、不器用なお子さんが多いですよね。不器用さも、食事に対してのモチベーションを下げる原因のひとつになります。

なぜなら、食事に前向きでないお子さんの場合、「食事をしなければならない」と「苦手なお箸(カトラリー)を使わなくてはならない」というように、課題がいくつか重なってしまうのです。

3歳くらいになると、お箸の練習をさせたりするご家庭も多いかもしれません。もちろんお箸の練習をさせることがダメということではありません

でも、お子さんの状況に合わせて、「今、どんな課題に取り組むのか?」を精査しましょう。

わが家の息子も不器用なところがあります。もう中学生ですが、自宅では3歳から愛用しているフォークを使っているんですよ。こだわりになっているかもしれませんが、自宅ではリラックスして好きなように食べてほしいので、もう少しだけこのまま見守ってみようと思っています。

原因3<食事の環境>

「食事の時は、テレビを消す」「食事に必要のないものはできるだけ置かない」など、食事の環境を気にしているご家庭は多いかもしれませんね。

わたしも子どもの頃、「食事の時にはテレビを消す」という環境で育ったので、テレビを消して食べることが当然と考えていました。でも、子育てをする中で、それは「正解ではない」こともあるんだな、という経験をしたんです。

わが家の息子は、偏食の他にも以下のような特性や課題がありました。

  • コミュニケーション
  • 不器用
  • 興味・関心の幅が狭い など

苦手な食事に向き合いながら、お箸の使い方や姿勢、コミュニケーションを指摘されるって苦痛なことですし、集中力も途切れてしまいます。

テレビを消した方が食事に集中できると思い込んでいましたが、食事のたびにお互いにイライラしたり、どんよりした気持ちになったりするくらいなら、息子の好きなテレビを見て楽しく食事をしようと考えました。

今でも、食事の時には一緒にクイズ番組を見たり、ニュースを見てお互いの意見を述べたり……。実は、コミュニケーションスキルも、「テレビを見ながら食事をする」ことで伸ばすことができたと感じています。

もちろん、これが全てのご家庭に有効であるといいたいのではありません。また、テレビに集中することで時間がかかったり、ダラダラ食べてしまったりすることへの介入は必要です。

でも、原因2<不器用>で述べたことにも通じるように、「今、どんな課題に取り組むのか?」と立ち止まって考えることはとても大切なことだと感じています。

子どもの偏食への向き合い方

毎日の食事。特に、朝の忙しい時は、お子さんを注意しがちになってしまいますよね。声かけを続けていれば、「いつか食べられるようになる」と思っているからかもしれません。

でも、上にあげた3つのように、子どもが持って生まれた感覚や、大人が良かれと思ってやっていることが原因になっている場合があります。

「感覚過敏はなおらない」と言われていますが、周りの理解や苦手な刺激の排除によっては、ゆるんだように見えることもあります。

また、「思春期の時に味覚が変わり、今まで食べられなかったものが食べられるようになることもある」という専門家もいます。わが家の偏食だった息子は、成長と共に、今では食べることに興味を持つようになりました。

プレッシャーを与えるまいと、昔封印した「一口だけ食べてみる?」というわたしの声かけに対して、「一口だけ食べてみようかな?」とチャレンジして「いける!」「もういいや」というやりとりもできるようになりました。

毎日のことだからこそ、長い目で見守っていきたいですね。

【information】いつもぜんちコラムに寄稿いただいている浜田さんがこのたび著書を上梓されました。子育てのヒントが満載のこちらの本、ぜひ書店で手に取ってご覧ください♪『発達障害&グレーゾーンの子どもを「急かさず」「怒らず」成長を引き出す言葉かけ 』浜田悦子 (著), 汐見稔幸 (監修) 実務教育出版

 

執筆者プロフィール

浜田悦子(はまだ えつこ)

発達障害・グレーゾーン専門
子どもとママのための家庭療育アドバイザー

繰り返す問題行動に怒られてばかりの子どもと 孤独な子育てに苦しんでいるママに寄り添い、 子どもの自己肯定感とママの子育ての自信を取り戻し 笑顔に導く家庭療育アドバイザー。
自身の子どもが発達障害と診断されたことをきっかけに、発達支援センターの指導員へ。以来、約2,000人以上の親子に関わる。
大学、発達支援センター、放課後等デイサービスでの講演・研修多数。

【著書】
『発達障害&グレーゾーンの子どもを「急かさず」「怒らず」成長を引き出す言葉かけ 』浜田悦子 (著), 汐見稔幸 (監修) 実務教育出版

【執筆・監修】
ユーキャン 子ども発達障がい支援アドバイザー講座
ユーキャン 思春期発達障がい支援アドバイザー講座

【メディア掲載】
毎日新聞、中日新聞、朝日新聞、ひよこクラブ、朝日新聞 WEEKLY AERAなど

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