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遠い親戚に我が子の障害について伝えておく理由

葬祭行事への参加機会はどの人の人生にも、好むと好まざるとに関わらず必ずめぐってきます。おめでたい席である「冠婚」はさておき、「葬祭」についてはなるべく参加したくないと考える人もいるかもしれません。

でももし、初めて参加するお葬式が自身の親のそれだった場合、親が亡くなったという現実をうまく受け止めることができるでしょうか。息子のように知的障害がある人にとってはなおさら困難なことのように思います。

そう考えると人の死とはどんなものかを体感しておくためにも、日頃から葬祭行事に参加しておくことには意義があると私は考えています。

たまにしか会わない遠い親戚に我が子の障害を伝えるかどうか

さて冠婚葬祭といえば、たまにしか会わない親戚に会う日ですが、たまにしか会うことのない遠い親戚に、わざわざ我が子の障害について伝えるべきかどうか、悩む方も多いのではないでしょうか。

 新型コロナウイルスの大流行期に私自身の叔母が亡くなったのですが、感染拡大防止の自粛生活の中、「身内だけでやる寂しいお葬式になるので、参列してほしい。〇〇君(息子)も来てほしい」と懇願されました。息子が叔母に会ったことはこれまでたったの2回でした。

 普通小学生にもなれば雰囲気を察して、例えば火葬場で待っているときなどは、神妙な顔をしてじっとしていられるものだと思うのですが、息子にはなかなかそれが出来ません。なのでこの時はスマホで好きなトイレの便器の動画を見ていました。「ご愁傷様でした」と言うのよと伝えたら、喪主に「ご先祖様でした」と言い間違えていました。

 なぜこれが許され、変な言葉遣いを笑われなかったかというと、親戚には息子の障害について、息子が2歳の頃から知らせていたからです。誰も息子の様子を不審に思っていない様子で、私も気を使うことなく参加できました。

障害があっても冠婚葬祭の場になるべく参加させたい理由

私は、「障害があって周りに迷惑をかけるから」と過度に気に病むのではなく、本人のために行事ごとには参加させた方がいいと思います。 

赤ちゃんの誕生や結婚式といった慶事はもちろんですが特に葬儀には人の生死に関する大事なことがつまっています。遺体を棺桶の上から見て、花を入れ…火葬場に行き、焼かれた後は花も、棺もなく、肉体もなく…骨だけになっていて、それを拾う。

息子は普段、テレビのニュースなどで「○○さんが死亡しました」といった報道があっても、他人事、また遠い世界のことと感じている様子です。でも、実際に葬儀参列する機会を通して息子なりに死とは何か理解し、死を身近なものとして感じられるのではないでしょうか。

通常の順番でいくと、親の方が子どもより先にあの世に行ってしまいますから、親の死もいずれ経験することになります。親の死が人の死に直面する初めての機会ではないこと、親以外の知っている人が亡くなった人の棺に花を供え、火葬場から戻ってきたときには、供えたお花も灰となり、故人の骨を拾ったことがあること、それが大切なのだと思います。

遠い親戚であっても私は息子の障害を伝えてきた

息子にとっての初めての葬儀は私の父の死でした。そのときは、ヘルパーさんに親族席に同席してもらいました。「見知らぬ他人がいる?」と思われるかもしれないので親戚にはあらかじめ、「息子は初めてのお葬式で慣れずに笑ってしまったり、パニックになってしまったりするかもしれないので、ヘルパーさんにお願いしました。息子について、親族席に座ってもらいます」と伝えました。 ですから、誰一人その光景を不思議がる親族はいませんでした。

 「障害があること」を隠すのではなく、「迷惑がかかる」と気を使うことなく、大切な行事に参列するためにも、たとえ年に一度しか会わない親戚であっても、息子の障害について伝えてきたことは、我が家にとっては正解だったと私は感じています。

いろいろな考え方があると思いますが、私の経験がどなたかの参考になればうれしく思います。

執筆者プロフィール

立石美津子(たていし みつこ)

著述家
20年間学習塾を経営、現在は著者・講演家として活動。
自閉症スペクトラム支援士

『一人でできる子が育つテキトーかあさんのすすめ』
『はずれ先生にあたったとき読む本』
『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』
『動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな』
など著書多数

日本医学ジャーナリスト協会賞大賞受賞作『発達障害に生まれて(ノンフィクション)』のモデル
Voicy  https://voicy.jp/channel/4272
オフィシャルサイトURL https://tateishi-mitsuko.com/
テキトー母さんのすすめ(アメブロ) https://ameblo.jp/tateishi-mitsuko/

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