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ADHDがある人がフリーランスで働く前に知っておきたいこと

2024.06.05

ADHDがあり会社員としてうまく働くのが難しいと感じる人の中には、フリーランスという働き方に憧れている人もいることでしょう。実は私も新卒で3年間会社員をやっていましたが、まったく会社員が合わずフリーランスで働く選択をしました。フリーランスはメリットもありますがデメリットも多くあります。今回は私の実体験を綴ろうと思います。

ADHDがある私がフリーランスという働き方を選んだ理由

私はとにかくケアレスミスが多く事務作業が大の苦手です。そして整理整頓もうまくできません。しかし、小さい頃から文章を書くことだけは得意で作文で多くの賞を受賞していました。読書も好きだったため大学では日本文学を学びました。

大学時代はアルバイトで、出版社での編集業務に携わっていました。そのため就職も出版系に進もうと思ったのですが、バイトをしていた出版社で、激務のあまり体を壊していく社員さんたちを目の当たりにして自信をなくし、出版とはまったく関係のない会社に事務職として就職しました。しかし、これが本当に合いませんでした。当時、ADHDの診断が下りていなかったため「石の上にも3年」と思い、気合いで3年間頑張りましたが、限界を迎え、フリーライターに転職したのです。

現在、朝はゆっくり9時前に起きて(二次障害で睡眠障害があるため睡眠薬を服用しており、早起きが困難なため)メールをチェックし、取材がある日はだいたい午後から取材に出かけたり自宅からオンライン取材をしたり。取材がない日は午後から原稿を書いています。夕方には仕事を終え、健康とダイエットのためにランニングに行きます。その合間に家事もするような、自由な働き方をしています。

書くペースが速いため、1日あたりの稼働時間は5〜6時間といったところでしょうか。ただ週刊誌の入稿の際は深夜遅くまで働いたり、書籍の執筆中は10時間以上書いていたりすることもありますが、無理なく働けて私にはとても合った働き方です。

フリーランスのメリット

ADHDのある私にとって、フリーランスのメリットは主に2つあると考えています。

メリット1:自分のペースで働ける

ADHDのある方は二次障害でうつ病や睡眠障害、双極性障害を併発している人もいます。うつでしんどいときは、私のような働き方であれば体調に合わせて仕事のスケジュールを調整することができます。私自身、睡眠障害と双極性障害があるので朝は遅いですし、うつのときは横になって少し元気が出たら執筆に戻ったりしています。

メリット2:仕事や取引先を選べる

会社員だと自分と合わない取引先とも仕事をしないといけませんが、フリーランスだと取引先の人とメールのやり取りをして合わないと感じたときや、提示されたギャランティがわりに合わないときは、断ることができます。自分で仕事や仕事相手を選択でき、そのことが自分の体調の安定にもつながっているように思います。

フリーランスのデメリット

フリーランスはメリットよりデメリットのほうが多いと考えたほうがいいです。私が直面しているデメリットは主に以下です。

デメリット1:収入に波がある

時期によっては仕事がまったくない月や、入金がだいぶ先の仕事もあります。毎月決まった額のお給料が振り込まれる会社員とは違い、毎月の収入に波があります。

デメリット2:請求書や確定申告などの事務作業が必要

自分が得意なことを仕事にしても、請求書の作成や確定申告などの事務作業もしないといけません。この事務作業を結構大きな負担に感じる人もいます。

デメリット3:たった一度のミスで仕事を失うケースがある

会社員はミスをしてもたいていの場合はクビになることはありませんが、フリーランスの場合、たった一度のミスが命取りになり、次回から仕事の依頼が来なくなるケースがあります。

デメリット4:社会保険料は全額自己負担。雇用保険もなし。年金も弱い

会社に所属していると多くの場合社会保険に加入できますが、フリーランスは全額自己負担です。また、有給もなければ退職金もありません。将来もらえる年金も雀の涙程度です。

デメリット5:SNSの発信に注意(炎上は命取り)

仕事の宣伝のためにSNSを活用するのは大事なのですが、ネガティブな投稿をしてしまうとそれを見た仕事関係の人に良い印象を持たれません。また、炎上してしまうとさらに仕事を失う可能性が高くなります。

ADHDがある人がフリーランスでうまく働くためのコツ

私なりのコツのようなものの一部は以下です。

1.貯金は大事

収入が不安定なのである程度貯金をしておき、収入が少ない月に備えましょう。

2.作業によっては外注も:

事務作業は外注を検討するのも一つの手です。私は時折、たまった雑誌のスクラップを大学時代の後輩に頼んでいます。

3.税理士は強い味方:

経理関係は税理士に依頼すると大変楽になります。私は毎月領収書と通帳のコピーとクレジットカードの明細を税理士さんに送付して、確定申告のときも必要書類を送るだけで済んでいます。

4.ミスを防ぐ工夫は必須:

ADHDでケアレスミスをしやすいので確認作業の手順を決め、慎重に行いましょう。私はノートPCだと文字が小さくてミスに気づきにくいため大きなモニタに接続しています。

5.クライアントによっては発達障害をオープンにするのもあり:

クライアントに発達障害をオープンにすることも検討しましょう。私の場合、発達障害の記事が多いためもともとオープンにしていましたが、そうでない職種の場合でも、配慮してもらえそうなクライアントにはオープンにしてもいいと思います。

ADHDがある人がフリーランスで働く前に知っておきたいこと-まとめ-

フリーランスという働き方はメリットもありますがデメリットも多いです。ADHDで会社員が合わないからフリーランスになろうと安易に会社を辞めることはせず、あくまでフリーランスは最終手段だと思っておいてください。フリーランスになるならメリットとデメリットをじゅうぶん考えた上で慎重に選択してください。収入が少ない月は不安になることもありますが、月単位の売上ではなく年間の売上で考えると少し元気が出ます。私もフリーランスを続けるためにこれからも頑張ります。

執筆者プロフィール

姫野桂

フリーライター。1987年生まれ。宮崎市出身。
日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをし、編集業務を学ぶ。卒業後は一般企業に就職。25歳のときにライターに転身。現在は週刊誌やウェブなどで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。猫が好き過ぎて愛玩動物飼養管理士2級を取得。趣味はサウナと読書、飲酒。

著書
『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(イースト・プレス)
『発達障害グレーゾーン』(扶桑社新書)
『「発達障害かも?」という人のための「生きづらさ」解消ライフハック』(ディスカヴァー21)

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