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特別支援学校の先生の性教育に関する意識とは?

前回のコラムでお伝えした通り、今回から何回かに分けて、私が調査研究をした情報から、それぞれの現状等(海外なども含む)に関して、エビデンスを基に出来るだけ分かりやすく、その実態に迫りたいと思います。
今回のコラムでは、特別支援学校の先生の「意識」に関しまして、多少の考察を交えながら皆さまと情報を共有したいと考えております。

■調査内容

まず始めに、2020年に東京・名古屋・大阪にある特別支援学校(但し、小学部から高等部が一体となっている学校)の先生145名を対象に調査した結果(独自調査)をお伝えします。何故、そのような方々を対象にしたのかと言いますと、それぞれの地域によって何かしらの特徴があるのか、さらには、これまでの研究では、対象を “ざっくりと特別支援学校の先生”にしていましたが、それぞれの先生の立場で意識が違うのではないかと考えたからです。
そこで本調査では、性別、教員歴、所属種別(小学部・中学部・高等部)、所属学校(地域)の4つの属性から、それぞれの属性間における「性教育指導」に関して、その考え(積極的にやるべきか/やや積極的にやるべきか)に違いがあるかを比較しています。因みに、消極的であると回答した先生は一人もいませんでした。

■仮説

次に、研究(調査)というのは、まず仮説を立てます。そこで、私の立てた仮説は、少なくとも属性ごとに、何らかの「差」というものが見られるだろうということでした。例えば、経験豊かな先生の方は、経験が浅い先生よりも、これまで児童生徒の性教育に関して様々な経験している為、その必要性を強く感じているのではないかという感じです。

■性教育の必要性

また、下表の見方ですが、それぞれのカテゴリー(表の左から2番目)の最上段に書かれているグループとそれより下のグループに違いがあるかを示しています。例えば、性別で言いますと、男性を基準として、女性には男性との違いがあるかどうかを見ています。その違いがあるかどうか(統計的な専門用語では、有意差といいますが)を示したのが、赤い枠で囲っているところです。この数値が、0.05未満を示すと、何らかの違いがあるという解釈になるのですが、見ての通り、全てのカテゴリー間のすべてのグループの比較において、0.05以上となっている事が分かります。
つまり、どの属性間においても、考え方に差異はなかったという結論が導きだされた結果になります。

因みに、江田ら (2000)が実施した調査においても,特別支援学校での性教育を問う質問に対して108人中107人 (99.1%)が必要であると回答しています。(但し、これは属性などの比較はしておらず単に特別支援学校に勤務する先生を対象にしています)江田らの調査から20年経った今日でも、教育指導の必要性を現場の教員は認識している結果となっています。

■性教育指導の困難さ

どのような事が性教育指導を行う際に困難に感じますか(複数回答)?という問いに関しては・・・
① 本人の理解度(122名)
② 成長の違い(85名)
③ 家族状況(46名)
④ 教科書の有無(38名)
と続きます。

ここで特徴的な事が2つあります。
まず、教科書の有無が④に入っている事です。いまから20年前の調査結果では、この教科書の有無は常に上位にランクインしておりました。しかし、現在においては④番目という結果です。これは言い換えれば、先生方はこれまでの知識や経験から教科書そのものの存在に頼るというよりも、(他の調査からも推測できますが)オリジナル教材を作成しているケースがほとんどであり、指導する上で必要なアイテムは既に手元にある可能性が非常に高いことが伺えます。

もう一つは、①の本人の理解度に関してです。これはもう少し丁寧に考察する必要があると感じております。つまり、本人の理解度に関しては、当然、20年前も今と変わらず個人差というものはあったと思いますが、20年前と比べて現在は、東京も名古屋も大阪も多くの大都市圏では、特別支援学校の定員がいっぱいで入れない状況と聞きます。人数が多い分、それだけ、多様な児童生徒が入学しているという事になります。つまり、教材云々というより、そうした多様な児童生徒に対して、どのレベル感で指導すれば良いのか苦慮されている様子が伺えます。

このように現場の先生方は、常に積極的な指導の必要性を認識しており、また、上記にはありませんが、SNSの発達による様々な影響に関しても多くの注意を払い日々頑張っておられます。

執筆者プロフィール

斎藤利之(さいとう としゆき)

1974年生、静岡県浜松市出身
一般社団法人全日本知的障がい者スポーツ協会 会長/公益社団法人日本発達障害連盟 理事/保護司
専門領域:学校保健・国際保健・障がい者スポーツ・高齢者スポーツ
本業の傍ら、都内のいくつかの大学で教鞭を執る。また、地域社会へも積極的に関与し、東久留米市子ども子育て会議会長等多くの公的な委員活動を始め、内閣府の事業も多数手掛ける。一方、障がい者スポーツ分野では、2019年ブリスベンで行われた知的障がい者の国際総合大会(Virtusグローバルゲームズ)において、日本選手団団長を務め、過去最高の金メダルの獲得に貢献。更に、Virtus Asia sports Directorとして、アジア全体の知的障がい者スポーツの発展に尽力している。

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