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実は傷ついている!発達障害者に言ってはいけない言葉4つ

2021.08.24

発達障害の認知が進み始めている昨今、身近な人が発達障害だったというケースは多いのではないのでしょうか。

そうすると、発達障害当事者から相談を受けたりアドバイスを求められたりすることもあると思います。しかし、相手のためを思って言った何気ない一言や励ましの言葉が当事者を傷つけていることもあるのです。今回は、発達障害者に言ってはいけない言葉を4つ紹介いたします。

■発達障害って個性だよね

つい「発達障害は個性だから気にしなくてもいいよ」と言ってしまったことのある方もいるかもしれません。

「発達障害は個性」「発達障害は強み」と言い切っている著名人すらいます。しかし、「発達障害は個性」と言っていいのは特性をうまく乗りこなしていて困りごとの少ない当事者のみです。困りごとが発生していたら個性ではなくそれは障害です。困りごとを抱えている当事者に「発達障害は個性だから前向きに考えようよ」と言っても、当事者は為す術がありませんし、余計落ち込みます。

また、何かの分野で成功している発達障害当事者がいると、キラキラと輝いて見えて卑屈になって嫉妬してしまう当事者もいるので、そのような人に「発達障害は個性」という言葉はグサリと刺さる刃物のようなものと考えた方がいいです。

■運動でもしてみたら?

これは実際に、発達障害当事者である私が言われてカチンときた言葉です。

発達障害の人の困りごとの多くは脳疲労によるものです。なので、脳が疲れていると運動をする気力さえ起こらないのです。しかし、適度な運動は一般的に体には良いことなので運動をして損をすることはないとは思います。ただ、「運動をすれば発達障害が良くなるんじゃない?」という言葉は非科学的ですし、あまりにも無責任な言葉です。

■そういうケアレスミス、誰でもあるよ

発達障害の人に多い困りごとの一つがケアレスミス。

「ケアレスミスが多くてどうしよう」と相談されたとき「そういうケアレスミス、誰でもあるよ」と言うのはNGです。

発達障害者のケアレスミスと定型発達の人のケアレスミスは桁違いのレベルなのです。例えば会議で使うパワーポイントなどの資料で数値を間違えていたとします。

定型発達の人の場合、その数値を直したら後に続く資料もその数値が続いているので直しますが、発達障害の人は最初の数値だけ直して後に続く資料の数値を直し忘れる、ということがよくあります。また、書類の記入漏れや誤字脱字が毎回発生するケースもあります。私自身、書類の記入漏れは毎回起こしています。

発達障害の人と定型発達の人のケアレスミスは頻度に違いがあり過ぎるので「誰にでもあるよ」と言われると「そうじゃない!」と言いたくなってしまうのです。

■発達障害に見えないね

発達障害の人、特にクローズ(周囲の人に発達障害であることを隠して日常を送っている人)の人は、発達障害に見えないために必死の努力をしています。

コミュニケーションが苦手ASD特性のある人は、人間関係がうまくいくための会話法などのハウツーを丸暗記して、「覚えゲー」として乗り切っていることもあります。しかし、この方法は発達障害じゃない素の自分を出せないのでとても疲れてしまいます。

ただでさえ発達障害の人は、定型発達の人にはあらかじめ脳に備わっているはずの余計な視覚情報や聴覚情報をカットする機能がついていないことが多いので、常に疲労感を抱えているのです。発達障害の人に励ましのつもりで「発達障害に見えないね」と言ってしまう「発達障害に見えないよう努力しているんだよ!」と当事者は反論したくなってしまいます。

 

さて、今回は定型発達の人が発達障害当事者に思わず言ってしまいそうなNG集を4つご紹介しました。

これに近いことを言ってしまったことがある方、ドキッとしたのではないでしょうか。

励ましやアドバイスのつもりが実は逆効果を生んでいた、ということもあり得ます。発達障害者と話すとき、上記のことに気をつけて会話すると、より「脳の多様性」の理解が深まるのではないでしょうか。

執筆者プロフィール

姫野桂

フリーライター。1987年生まれ。宮崎市出身。
日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをし、編集業務を学ぶ。卒業後は一般企業に就職。25歳のときにライターに転身。現在は週刊誌やウェブなどで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。猫が好き過ぎて愛玩動物飼養管理士2級を取得。趣味はサウナと読書、飲酒。

著書
『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(イースト・プレス)
『発達障害グレーゾーン』(扶桑社新書)
『「発達障害かも?」という人のための「生きづらさ」解消ライフハック』(ディスカヴァー21)

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