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出生前診断 きょうだい児に迷惑をかけたくない?

出生前診断を受けて、我が子にダウン症の可能性があると告知されたときに、親御さんの第1位の悩みは「産むか否か」、そして第2位の悩みが「きょうだいに迷惑をかけるのではないか、将来負担になるのではないか」であると聞き、ダウン症のある方のきょうだいにこのことを伝えて「どう思いますか?」とインタビューしてみました。弊協会が主催した「きょうだいの集い」に参加したことのあるきょうだいの方々に質問しているので、すべてのきょうだいの意見ではないことをご理解ください。

 

<きょうだいに実際に聞いてみました>

■20代 女性 立場:姉

弟自身に迷惑を感じていたというより、“こだわり”などの障害特性に対して迷惑感があったのかなと思います。迷惑はゼロではないけど、それ以上にダウン症のある弟が居てよかったと思います。

 

■20代 女性 立場:妹

私の場合、「迷惑」というのは今のところ実感がないです。兄が存在すること自体への感謝とか、なんだかんだやさしくお兄ちゃんしてくれたみたいな恩みたいなものはずっと感じていました。それに対して何も返せていないことに罪悪感もあり、今は遺伝カウンセリングの仕事をしています。この先、面倒を見ることがあっても「迷惑に感じる」とは次元がちがう気がしています。迷惑というのは、子どもの時の話と、親なきあとの話と、それぞれ想像しておられる方がいると思います。子どもの時は、ダウン症のありなし以前に、その存在が当たり前すぎて「ダウン症だから」というのは私自身にはなかったです。小さい頃だと迷惑というよりも嫉妬とかはもちろんありました。

 

■大学生 女性 立場:姉

私はダウン症の妹がいることが迷惑だと思ったことは一度もありません。迷惑ではなくて親亡き後の事や、「きょうだいとして面倒を見ていくのにどうしよう」とか「私ができるのかな」といった不安を持ったことはありましたし、今も不安です。ダウン症のある子どもを産むことが、きょうだい児に迷惑をかけてしまうという考え方は違うと思いますし、正直悲しいです。ダウン症のお子さんを産むことは不安かもしれませんが、ダウン症のことをもっと理解していただけるよう努めていきたいと思います。

 

■20代 女性 立場:妹

難しい質問ですね。親の子育ての大変さを肌で感じて育ったのでなかなか答えづらいのですが、出生前診断でお子さんにダウン症があることが判ったあと、きょうだいに迷惑をかけるからという理由で出産を断念するのはとてもつらいです。きょうだいもダウン症のある子も等しくその親の元で幸せになる権利があるとおもいます。きょうだいの立場からは、「きょうだいに迷惑がかかるから」を理由に産むことを諦めてしまったら、私たちまで存在を否定されるようで悲しいなと思います。

 

■20代 女性 立場:姉

私は迷惑だとは思わないです。良い部分のほうが多かったと思います。「ダウン症や障害がある=迷惑」だと思わないです。妹はめちゃくちゃ人の空気を読み取ったりしているので、すごいなと思います。

 

■50代 女性 立場:姉・親

ダウン症の弟と障害のある子どもがいる立場の私ですが、親御さんはさまざまな理由で診断を受けられたのであろうと思います。きょうだいのことを案じたことは現実としても、本音のところは「この子を育てていけるだろうか」という不安が「きょうだいに負担がかかるのではないか」という思いに置き換えられ、親御さんご自身が不自由さを感じているから出てしまう言葉なのではないでしょうか。私からすると、そこで「きょうだいを引き合いに出さないで下さい」と言いたいです。

 

■60代 女性 立場:姉

きょうだいが主体的に育てるわけではないので、迷惑というのは当たらないと思います。自分の親が生むと決断をした命を迷惑だと思うでしょうか?その時は受け入れるのが当たり前だと思います。私は「この子より先には死ねない」と強く思う母に育てられたのでそう思うのかもしれません。もっとダウン症のある兄弟姉妹に関わることが多い方は私と違う意見かもしれません。

 

■20代 女性 立場:姉

私はもちろん迷惑ではないです。むしろ親に勝手に「迷惑かも」って心配されてもなぁって思います。きょうだいは、それなりにたくましく育つし、ダウン症の妹がいることで両親よりもずっと小さい時から世界にはいろんな人がいることを当たり前に生きていけるんだから、ありがたいと思います。これはある程度私が大人になってから理解できたことで、小さい時はお母さんがとられちゃうとか、幼い子どもだったら誰でも思うようなことは考えていたかもしれません。

 

■20代・社会人 男性 立場:弟

私は迷惑だと思いません。あくまで自分の話でしか語れませんが、自分が生まれた時から姉はいたので、どんな時でも姉がいることが当たり前の生活でした。その世界しか知りません。姉がいない世界を想像できません。姉がいたことで今の自分がいて、今の家族がいると思っています。一方で、出生前診断を受けた方がきょうだい児のことを考えることは、至極まっとうなことだと思います。わたしでもきっと考えると思います。その時に迷惑かどうかを考えて自分だけで判断するのではなく、ダウン症の子を育てる親の話や、きょうだいの話などを聴いたうえで決断する世の中になってほしいなぁと個人的には思います。知らずに判断するよりは、知ったうえで決断してほしいです。

 

<迷惑や負担を心配しなくていい社会へ>

 

「迷惑がかかるとは思わない」という回答が多かったのですが、だからといってこれはポジティブな意見だけを集めたに過ぎないと思わないでほしいのです。誰もがプラスとマイナス両方の感情を持っているので、どんな感情も持っていていいのです。不安や心配といった感情は、自分が本来向き合う課題は何なのかを教えてくれる大切なメッセージです。

最初から「負担になる」「迷惑をかける」と悩むよりも生まれてくる命を尊重してほしいと思います。親御さんの出生前診断の悩みから「きょうだいに迷惑や負担をかけるのではないか」という心配事がなくなる日が来ることを祈っています。

一般社団法人ケアラーアクションネットワーク協会 代表理事 持田 恭子

執筆者プロフィール

持田恭子

1966年生、東京都出身。ダウン症の兄がいる妹。
海外勤務の後、外資系金融機関にて管理職を経て、一般社団法人ケアラーアクションネットワーク協会代表理事に就任。父を看取り、親の介護と看取りを経験し、親なきあとの兄との関係性や、きょうだい児の子育てについて講演を多数行っている。障害のある兄弟姉妹がいる「きょうだい」を対象に「中高生のかたり場」と「きょうだいの集い」を毎月開催。その他に、きょうだい、保護者、支援者が意見交換をしながら障害者福祉と高齢者介護の基礎知識を深めるエンパワメントサポート講座を開講。親子の気持ちが理解できる、支援者として家族支援の実態がつかめる、と好評。自分らしく生きる社会づくりを目指している。

【講演実績】
・保護者向け勉強会(育成会・NPO法人・障害者支援施設)
・市民フォーラム
・大学、特別支援学校(高等科)

【職員研修】
・外資系銀行
・社会福祉事業団

【メディア実績】
・NHK Eテレ「バリアフリーバラエティ番組バリバラ」
・NHK Eテレ「ハートネットTV」
・その他ニュース番組など

【著書】
自分のために生きる
電子書籍Kindle版 https://amzn.to/3ngNMS6

【ホームページ】
https://canjpn.jimdofree.com/

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