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ワーキングメモリとは?効果的な勉強方法や生活支援を紹介

発達障害・知的障害のある方の中には、ワーキングメモリについての悩みを抱えている方もいらっしゃいます。
子どもの普段の生活で忘れ物が多い、言ったことができない、勉強してもすぐ忘れてしまうということがあったとき、それはワーキングメモリの弱さが関係していることがあります。

ワーキングメモリとは情報を一時的に記憶しておく能力のことです。とても大事な能力なので、ワーキングメモリについての正しい理解、そして子どもとの向き合い方についてご紹介します。

1.ワーキングメモリと日常生活の関係性とは?

ワーキングメモリは、情報を一時的に記憶しておく能力のことです。この記憶した情報を処理し、利用するのもワーキングメモリの能力になります。ワーキングメモリは勉強や仕事、日常での会話、家庭内でのお手伝いなどあらゆることに関わっており、日常生活を営むのに必須の能力といえます。

ワーキングメモリが弱い子どもの特性として、言われたことができなかったり、授業についていけなかったり、テストでケアレスミスが多かったり、宿題の提出を忘れてしまったり、持って帰ってくるはずのプリントを出し忘れてしまったりということが挙げられます。子どもが学習についていけず、WISC-IVやKABCI-IIのような認知能力が分かる検査をすることでワーキングメモリの低さが分かることもありますが、前述の例がワーキングメモリの弱さを疑わせるサインになります。

図1.ワーキングメモリのメカニズムのイメージ

ここで大切なのはワーキングメモリの弱い子=IQの低さではないということです。情報処理能力が高くてもワーキングメモリの低い子も多くいます。ワーキングメモリが弱いことを批判してしまうとその子の自己肯定感の低下につながり、持っている可能性を最大限に引き延ばせない可能性が起こり得るのです。そのため大切なのは毎日の生活の中で適切な支援をしてあげるということです。

2.ワーキングメモリの種類と支援方法について

ワーキングメモリとは単体の能力システムではなく様々なタイプがあります。例えば言語性ワーキングメモリは言葉に関するワーキングメモリであって言語能力の高さを予期するものであり視空間的ワーキングメモリとは異なります。一方で計算や図形の苦手さは視空間的ワーキングメモリが影響すると考えられています。そのため子どもの特性をよく理解し適切な支援をすることが重要になります。

図2.ワーキングメモリの仕組み

ここからはワーキングメモリが弱い子にできる支援法を紹介していきます。

2.1 エピソード記憶で覚える

1つ目の方法は情報を直接長期記憶に定着させるという工夫の仕方です。ワーキングメモリは情報を一時的に記憶しておく能力、つまり「短期記憶」のこと。そのため、情報を「長期記憶」にすることができれば、簡単には忘れないようになります。

例えば子どもが授業で学んだ足し算を普段の買い物の場で応用してみたり、学んだことに対して「そんなこと知ってるんだ!すごいね」という声掛けをしてあげることで、学ばれた内容が感情と共に子どもの体験に結び付けられます。そうすることで子どもが実際に体験した「エピソード記憶」として長期記憶に定着しやすくなる効果があります。

図3.エピソード記憶を活かした例

2.2 間違い探しで覚える

またワーキングメモリの弱い子には多くの量を一度に覚えることは効果的ではありません。例えば新しい漢字を10字、10回ずつ書かせるという勉強の仕方をしてしまうとたくさん書かされる上に覚えられないため漢字の苦手意識の強さに繋がりかねません。

そのためワーキングメモリの弱い子には漢字の間違い探しをさせたり、間違えないための方略を考えさせたりする方法があります。その子の得意な情報処理に合わせた覚え方でスムーズに記憶に定着させる効果が期待できます。


図4.漢字の間違い探し学習の例

2.3 段階的に伝える

漢字同様、口頭の指示を覚えられない子には複数の情報を1度に提供するのではなく、1つのタスクを細かく区切って1つ1つ段階的に伝えていくことも効果的です。また1度伝えたことを子どもに繰り返させることで本人がどの情報を聞き漏らしているかを確認する手段にもなります。

2.4 長期記憶に定着させる反復練習

(1)知識を正しく理解する(授業)(2)理解した知識を定着させる(ドリル)
勉強は理解(知識)が脳に定着していなければ成績に繋げることができません。そのため(1)と(2)をバランスよく勉強させることが学びの効果を高めます。(1)で学んだ内容を長期記憶として定着させるためにドリルの反復練習方法を工夫しましょう。

新しく授業を受けた翌日は、学習範囲を5分に区切ってドリルで復習してください。翌々日にも、もう一同じ範囲を5分間、ドリルで復習し、正答率が80%以上となったら理解定着しているものとして先に進みましょう。逆に言うと「1日に何度も反復練習することは避けましょう」ということです。

市販のドリルでもいいですし、最近ではタブレット教材が普及してきています。ドリルをこなすと丸付け作業が意外と面倒だったりするので、時間を短縮したい方はITの力を借りておくとよいかもしれません。

2.5 ボイスメモを活用する

忘れ物が多い子には朝のルーティンを自分の声で録音してもらい、それを流しながら準備をすることで親子の衝突を防ぐ効果があります。

2.6 チェックリストを活用する

また学校から忘れ物をしてくる子にはチェックリストを用意し1つ1つチェックすることで忘れ物を減らし成功体験を積むことができます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。子どもの脳は大人に比べ発達段階にあるため、どんな子でもワーキングメモリの容量は増える傾向過程にあります。その中で大切なのは子どもが成功体験を積み自分で挑戦しようという心構えです。そのためにまずは自己肯定感を育みその子に合った工夫で支援をしてあげましょう。



 

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執筆者プロフィール

道地真喜(どうち まき)

臨床心理士
カリフォルニア州立大学院(修士)教育学
カリフォルニア州私立大学院(博士)心理学
カリフォルニア州臨床心理士免許
カリフォルニア州での臨床経験約10年
ASDのお子様向けのABAセラピー、3歳から18歳を対象とした心理検査、 認知行動療法、プレイセラピー、大人の鬱、不安症のカウンセリングを主に実施
アメリカでの臨床経験を活かし、(株)すららネットにて発達障害児への心理検査、 カウンセリング、保護者向けのペアトレーニングなどに従事。

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