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発達障害のある子の偏食の原因と3つの問題

はじめまして。広島市西部こども療育センターの管理栄養士の藤井葉子です。

私は、療育センターの通園施設や保育園や学校に通っているお子さんの拒食・偏食・肥満などの栄養に関するご相談をお受けしています。読んでくださっている方の中には、食事に関することで、様々な不安や悩みを抱えながら生活されている方もいらっしゃると思います。

食事に関する問題の原因は個人によって様々ですので、よくある事例をあげながらお話させていただき、少しでも楽しく、健康的な食生活を送る参考にしていただければと思います。

■お母さんからよくある相談

障害のあるお子さんが決まった物しか食べない、お菓子しか食べないという悩みを持たれているお母さんも多いのではないでしょうか?私の勤めている療育センターでも、発達障害のお子さんを含めご相談をよく受けます。

特に下のような相談を受けることが多いです。

・野菜や果物が食べられない

・食べられるものが少なく、同じ物ばかり食べている

・だんだん、食べられるものが減っている

・炭水化物しか食べられない

・離乳食がすすまない(ミルクばかり飲んでいる)

・噛むことができない

・家以外で食べることができない

・食に興味がなく栄養が取れているか心配

■よくある偏食の原因

今までのご相談からいろいろな方を支援していると、偏食の原因は個人で様々ですが、主に3つに分かれています。

①口腔機能的な問題、②感覚的な問題、③栄養的な問題から偏食になってしまう場合があります。お子さんによっては、1つではなく、原因が重複している場合もあります。また、定型発達のお子さんについても割合的には低くなりますが、同じような傾向は見受けられます。

1つずつ詳しくみていきましょう。

①口腔機能的な問題

成長や運動の発達が緩やかなことから口腔の機能の発達が遅れたり、自然に獲得していくはずの口の動きができないなど、うまく食べられないために食べることへの印象が悪くなり、安心できる同じ食材を食べていることが多いです。

・舌の送りこみの弱さから、ミルク・ヨーグルト、同じベビーフードしか食べない。

・舌圧が弱く丸呑みになったり、刻んだ食材を送り込めず、お粥に混ぜたりしている。

・舌が左右に動かず噛めないため、ご飯や 納豆ご飯、パンなどをモゴモゴと吞んでいることがある。

・噛めても、すりつぶしができないため、硬い物や繊維質のものが食べられず、ハンバーグやポテトなど噛み易いものを食べていることがよくある。

・噛みやすいものばかりを食べているので、噛む力が付かないため食が広がらない。

 

②感覚的な問題

・過敏があることで、食感、匂い、味など嫌な印象を持ち食べられないことがある。

・逆に感覚が鈍く、軟らかい食感、低温、味の薄さなど刺激の少ない食材に反応できない、美味しく感じないなど、食べられない場合もある。

・視覚的に色や形が変わる、食材が混じることで食材がどれかわかりにくい、または記憶しにくいことがある。

③栄養的な問題

・活動、筋肉量、筋緊張の状態により一般的な年齢の必要エネルギー量よりも少ないため、すぐにお腹いっぱいになり種類が広がりにくい。

・小食を心配し、食べやすいものを多くあげてしまい食べられる種類を減らしている。

・噛みやすい炭水化物やお菓子等は、少量でエネルギー量が高いため、エネルギーが充足してしまい、食が広がらず他の栄養が不足している状態である。

■ただ見ているだけでは原因がわからない実情

 発達障害がある子ども達は、うまく食べられなかったものを避け、うまく食べられた印象のいい食材を食べています。

どこかに相談すると「そのうち治るでしょう」とか、「小学校頃には治るでしょう」と言われ、成人になっても治らず、給食やグループホームなどでもみんなと一緒に食べられず、何も食べずに帰ることがあります。

また家族が用意した別のものを別部屋で食べていることもあります。

加えて、炭水化物、お菓子、ジュースなど糖質の高いものしか食べられないために肥満や生活習慣病になってしまうケースや、ひどい場合はビタミン欠乏症などで入院することもあります。

食べたくないのではなく、食べられないので、その原因を解決しない限り安心して食べることは難しいです。

言葉のわかる子どもは、言葉だけで食べるように促され、丸呑みしたり、お茶で流し込んだりして吐くようになることもあります。そして段々と給食時間に嫌な印象をもつようになり、学校に行きたがらない子も出てきます。

発達年齢によっては、頑張るように促して葛藤して少量口にすることは大切ですが、一口が大きかったり、多くの量を頑張らせるのは、子どもにとっても、食べさせる側にとっても苦痛な時間になってしまいます。

原因と思われる一部分を治そうとしても、それぞれが別の問題ではなく相互に関わっているので、どれも解決していく必要があります。

栄養の問題が解決していないとお腹がすかないので噛む練習もできず、口腔機能をアップもできないですし、感覚的に受け入れが悪いと咀嚼訓練もできないので食材も広がりません。

また口腔機能が解決しないと噛めないので不安で食材の種類が広がらず、栄養面も感覚も変わらないままです。現在食べているものを少し減らして、食べる時間、量の上限を決め、空腹を作り栄養面を変化させると食べ始めることがあります。

感覚的問題と思っていたことが、いろいろ口にできるようになり、実は、軟らかいものや小さい物が噛めなくて、おえっとなっていた、口腔機能問題だったということもあり、実際アプロ―チをしないとわからないこともあります。

■原因をどうやって把握するか

それでは原因をどうやって発見すればいいのでしょうか?

まず原因を見つけるためには、どのように食べているかの観察が大切です。

家庭での食事状況、食べているものなどを調べ、栄養状態など、全体の情報を集め評価し予測をたてていろいろとアプローチをしてみることが子どもを理解していくことに繋がります。

詳細は次回になります。

 

執筆者プロフィール

藤井葉子(ふじい ようこ)

広島市西部こども療育センター 管理栄養士
http://www.hsfj.city.hiroshima.jp/020201030000seibutop.html

1967年 北海道で生まれ、各地を転勤し広島に在住。
平成16年より、17年間 障害のある子ども達の偏食、拒食、肥満の食事対応や相談を行う。
成人の施設での食生活改善相談の経験もあり、幅広い年代の方へアドバイスを行っている。

学会等で、自閉症の偏食に関する論文等を発表、「自閉症の偏食対応レシピ」やホームページ作成、「発達障害児の偏食改善マニュアル」を出版し、障害のある方の食事支援の仕方や必要性を紹介しています。

自閉症の偏食対応レシピ: https://holycow6.wixsite.com/nagisa
発達障害児の偏食改善マニュアル: https://www.chuohoki.co.jp/products/other/5944/

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