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大人の発達障害、診断は受けるべき?

2022.12.07

近年、大人の発達障害に関する本が多く出ています。しかし、発達障害傾向がある人でも診断を受けていない人もいます。どんなときに診断を受けるべきなのでしょうか?

また、診断を受けたことによるメリット、デメリットはあるのでしょうか。私自身発達障害の診断を受けてきて、約100人の発達障害当事者を取材してきた経験から説明していこうと思います。

 

■明らかに仕事やプライベートに支障が出ているとき

診断を受けてほしいときは、明らかに仕事やプライベートに支障をきたしているときです。仕事でミスばかりしてしまう、仕事が続かない、など。また、プライベートでは友人とうまくいかない、友人との約束に遅刻したり約束したこと自体を忘れてしまう、部屋を片付けられずゴミ屋敷状態、平日の仕事に疲れすぎて休日は寝て終わってしまう……といった場合に診断を受けてもらいたいです。

 

■二次障害を併発しているとき

発達障害の特性が元で強いストレスがかかっていると、うつ病などの二次障害を併発してしまうことがあります。私の場合、プライベートで強いストレスがかかって不眠状態となり、どうにかして眠りたくて心療内科に駆け込みました。

その際、発達障害かもしれないので検査をしてほしいとお願いしたところ、思ったとおり発達障害が発覚しました。これも元々発達障害があって、その特性が悪い方面に作用してしまったことによる二次障害と言えます。私の二次障害は不眠以外にも双極性障害と摂食障害が判明しました。今は双極性障害の薬とADHDの薬であるストラテラを服用してうまく発達障害及び二次障害と付き合っています。

 

■診断をもらうメリット

発達障害の診断をもらうと、「ほっとした」「納得した」といった感想を抱く方が多いです。私も「やっぱりそうだよな〜」と思ったのを覚えています。診断をもらうとこのように精神的に安心できます。一方で、「障害者」という現実を突きつけられてショックを受けてしまう人もいるのでそこは注意してください。

もう一つのメリットは、発達障害の検査で用いる知能検査のWAISというテストで自分の得意な分野と苦手な分野が分かるので、今後生きやすさを追求するヒントがもらえるということです。例えば、言語性の能力が高ければ私のように書く仕事が向いているかもしれませんし、短期記憶が弱ければ常にメモを取るという対策ができます。他にも客観的に物事を考えるのが苦手な特性がわかれば、一歩引いて物事を考える、という行動を心がけるなどできます。

■診断をもらうデメリット

先程も述べましたが少なからずショックを受ける人もいるでしょう。でもそのショックは、自助会に参加したり、同じ当事者と話してみたり、カウンセリングを受けたりすることで和らいでいく場合もあります。ショックを受けたとき、あまり障害者ということを意識せず、あくまで特性と考えると楽になります。最近ではニューロダイバーシティという、「脳の多様性」と捉える言葉も広まってきました。

次のデメリットは特性により合う仕事を見つけにくいということと、障害者雇用の場合、配慮は受けてもらえるけど給与が低い場合が多いということです。発達障害の人が働くということは、お悩みのナンバーワンと言ってもいいほどです。オープンで働くのか、クローズにするのか、障害者雇用で働くのか選択肢は様々です。ここはよく考え、医師やカウンセラーさんとも相談したほうがいいと思います。

さて、もう一つのデメリットですが、生命保険に入りづらくなることです。私自身、先日、とある生命保険の商品に入ろうとしたら、審査が通りませんでした。原因は発達障害の二次障害で飲んでいる双極性障害の薬のせいでした。ですので、生命保険会社によく確認することが賢明かと思われます。しかし、ぜんち共済は発達障害、知的障害、てんかんなどがあっても入れる保険なので、ご興味を持った方は加入を検討してみてはいかがでしょうか。

 

以上が診断を受ける基準とメリットとデメリットになります。診断を受けるか迷った際はぜひ参考にしてみてくださいね。

執筆者プロフィール

姫野桂

フリーライター。1987年生まれ。宮崎市出身。
日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをし、編集業務を学ぶ。卒業後は一般企業に就職。25歳のときにライターに転身。現在は週刊誌やウェブなどで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。猫が好き過ぎて愛玩動物飼養管理士2級を取得。趣味はサウナと読書、飲酒。

著書
『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(イースト・プレス)
『発達障害グレーゾーン』(扶桑社新書)
『「発達障害かも?」という人のための「生きづらさ」解消ライフハック』(ディスカヴァー21)

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