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発達障害のある子の偏食の原因の探し方って?詳しく説明します(後編)

前回のコラムでは、偏食の原因の探し方について①~③までご紹介させていただきました。(前回のコラムはこちら

主に、食べられるものの把握や食べているときの行動、カウプ指数を用いた栄養状態や体格の判定をお話しましたが、今回も偏食の原因を探るために、家庭での食事記録の方法や偏食傾向チェックリストのつけ方をお話します。

④家庭での食事記録

3日間の食事記録をつけてみましょう。どんなものを食べているかと、どういう傾向があるかがわかりやすくなります。様式は何でもいいのですが、ご飯など計量が可能でしたら1回は測ってもらう方がいいです。計量が難しい場合は、茶碗1杯、コップ1/2杯など、数字での記入を心がけましょう。

水やお茶などの飲み物も把握も大切です。飲んだ時間帯に記入しましょう。

3日間の間には食べなかったが、食べるものがあれば枠外に記入しておくと参考になります。実際に並べて書いてみると、何気なく食べているものが再認識することもできます。

・記録からの原因の探り方

例えば、下の表からこんなことがわかります。

  • チキンカツは舌でつぶしたり、のんだりできないので噛んでいる。
  • トマト、ブドウ、けんちん汁の具など箸で切れるような野菜しか食べていない場合は、すりつぶした噛み方ができていない。
  • ごぼうやしいたけ、パイナップルなど箸で切れないような食材を多く食べていると、すりつぶした噛み方ができていると判断します。

偏食傾向チェックリストを参考にする

偏食傾向チェックは、の3つのグループの中から、どのグループの対応が適しているか、チェックするものです。こちらからダウンロードできます。

グループ1に該当した場合

揚げる、焼くなど好みの硬さに調理法を変えて、食べられる種類を増やすようにしてみましょう。温度(熱い・常温・冷たい)や味の濃さなども食べられないものについては、好みに合わせてみましょう。(好きなものまで合わせすぎると、更に強くなるので気を付けましょう)

グループ2に該当した場合

繊切り、粒々、丸、薄さなど好きな形があれば近い物にしてみましょう。好きな調味料があれば、食べられないものはその調味料を使い、味を統一することで手が出る場合もあります。

グループ3に該当した場合

見た目を知っているものしか口にしないので、食べられているものを8割程度に減らし、違うものを食卓に出すようにしましょう。

 

どのようにしていくか計画する

ここまでわかると、得手不得手、何が原因なのか推測され、今後対応方法が予測されてきます。

  • 全体の情報から何が食べられない一番の原因か評価する
  • 口腔機能に課題があり、噛む力が弱い、すりつぶした噛み方が出来ていない場合は、うまく噛める食材や調理法を検討する
  • 噛む力が弱い場合は、増やす食材を検討する時に、噛まないと食べられない食材を選ぶように気を付ける
  • 体重が多い場合は、エネルギー量を下げて、多く食べている食材を少しずつ減らしながら違う食材をだすようにする
  • 体重が丁度いい、少なめの場合は新しい食材をだすが、手が出ないようなら、多く食べているものを少しずつ減らす
  • 一時的に減らすのではなく、上限量を決めて継続して行う
  • 増やす食材を検討する時に、今後、給食にでるような食材を選ぶように気を付ける
  • 嗜好を考慮して、食材や調理法をどのように変えるか、少しずつ減らしたり、増やしたりするか計画をたてて行う。

実施して状態をみながらステップアップ、内容の修正を行う

例えばよくあるのが、食べられないものを油で揚げて、お菓子を減らしてみた。しかし揚げたもので食べるのは、ポテトぐらいで終わってしまい、ダメだと思いやめてしまうことです。

お菓子を100kcalに減らしてみたが、体重が減っていない場合は、何か他の食材に変わっていることがあります。ごはんを食べない日があったが、食べる日が増えた。前より肉を食べる回数が増えて蛋白系のものの量が増えたとか、牛乳の量が増えたなどです。

体重が多くない場合で、体重が特に減っていない場合は、再度食事の量を見直しましょう。

多いものを調整するとだんだん揚げた野菜等、食べてほしい物を触るようになり口に入れる機会が増えていきます。

揚げたものをつけてみたが、そこまで噛む力がなかった、また歯に当てられなかった場合は、スナック菓子や焼いたパンなど噛み易い物に変えるか、介助者が手に持って歯に当てることから始めるなどやり方を変えていきます。

 

次回は、原因に対しての具体的な対応方法を紹介していきます。

それぞれの原因にどのような対処法があるか、原因が重複している場合もあり、1人1人で選択が違います。例や対処法があるかをご紹介できたらと思います。

 

 

 

執筆者プロフィール

藤井葉子(ふじい ようこ)

広島市西部こども療育センター 管理栄養士
http://www.hsfj.city.hiroshima.jp/020201030000seibutop.html

1967年 北海道で生まれ、各地を転勤し広島に在住。
平成16年より、17年間 障害のある子ども達の偏食、拒食、肥満の食事対応や相談を行う。
成人の施設での食生活改善相談の経験もあり、幅広い年代の方へアドバイスを行っている。

学会等で、自閉症の偏食に関する論文等を発表、「自閉症の偏食対応レシピ」やホームページ作成、「発達障害児の偏食改善マニュアル」を出版し、障害のある方の食事支援の仕方や必要性を紹介しています。

自閉症の偏食対応レシピ: https://holycow6.wixsite.com/nagisa
発達障害児の偏食改善マニュアル: https://www.chuohoki.co.jp/products/other/5944/

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