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子どもの自己肯定感を守るために何ができる?

私は発達障害の子どもを育てる保護者に向けて、講演会の講師として呼ばれる機会があるのですが、難しい質問を受けることがあります。

我が子は発達障害のグレーゾーンで、幼稚園~小学校と、担任から叱責されることが続き、すっかり自信を無くしてしまいました。成長し、中高生や大人になったときに自己肯定感が低い場合どうしたらよいですか?」

とても難しい課題です。

中学生にまでなってしまうと、その子のそれまでの人生の中で「自分は出来ない」という経験を積み重ねすぎています。だから、これからの人生では、たとえ出来なくても、出来ない自分をそのまま受け止めてくれる人に出会うことが大切になると私は思います。

出来ないことは遠ざけ、向いていることを探す

すでに二次障害を起こしているような状況で、さらに自己肯定感を壊されてしまうような場に行かないことも大切です。「努力すれば何とかなる」「気合で乗り越える」と鼻息荒く飛び込んで挫折体験を重ねるのではなく、自分の苦手を受け入れて、出来ないことは遠ざけ、自分に向いていることを探すような考え方、行動ができるとよいのではないでしょうか。例えば……

■部活選び

中学生になると部活が始まります。向き不向きを考えず、憧れだけで部を選んでしまうと、自分の適性とはかけ離れていて苦しい思いをすることがあります。

仮に運動部に入りたいとして、社会性やコミュニケーションに課題がある人が、野球やサッカーなどのチームスポーツを選んでしまうと、自己肯定感の低下につながりかねません。逆に、陸上競技、水泳、テニス、卓球など一人でできるスポーツを選ぶと、周囲の予想以上に活躍できることがあるかもしれません。

■仕事選び

社会に出ても、職場で叱責されるような失敗が続くと、自己肯定感はますます低くなってしまいます。自分の適性を考えた仕事選びをしましょう。例えば、あまり人とのコミュニケーションが得意ではないという場合は接客業や営業職より、経理やエンジニアを選んだほうがストレスが少ないかもしれません。逆に注意散漫で正確性が要求される仕事は難しいけれどもアイディアマンだ、という場合は企画職などに目を向けてみるのもいいかもしれません。

学校の先生は、学力や授業態度といった既存の枠組みにとらわれすぎないでほしい

私は以前、学習塾を経営していました。また、発達障害児を育てる保護者でもあり、学校の先生との付き合い方の本を執筆したこともあります。そのためでしょうか、小学校から先生向けの研修依頼をいただくことがあります。

研修時、先生方からは「集団行動がとれない子はどうすればよいですか」「椅子に長く座っていられない子はどうすればいいですか」といった質問をよく受けます。

それらを聞いていると学校の先生方は、一定の枠組み(椅子に座っていられるか、集団行動ができるか、勉強ができるかなど)の中でのみ、子どもの姿をとらえているのではないか。また、勉強や運動、日常生活などが、バランスよく、オールマイティにできる子だけを高く評価しているのではないか、と感じます。

もちろんそうではない先生もいますが、一定の枠組み内で評価すること以外想定していない先生が一定の割合、確かにいます。

先生は子どもに合わせて「褒めポイント」を変えてみて

子どもを褒めることに課題を感じている先生、また生徒を叱ってばかりいる先生に伝えたいことは、「褒めポイントを変えてほしい」ということです。

例えばこのようなことです。

  • 給食をおかわりする
  • 寝癖がついていない
  • 誰よりも早く学校に到着している(※たとえ「忘れもの魔」でも)
  • 蝉とりがうまい
  • 風邪をあまり引かない
  • 砂場で泥団子を上手に作れる

学力、授業態度という既存の枠組みにとらわれず、ほんの小さなことでも、生徒が頑張っていること、夢中になっていることを拾い上げて褒めてほしいと思うのです。そして叱責ばかりで自信を喪失させないこと、二次障害をおこさない関わり方を、ぜひ意識していただきたいと思っています。

また、支援が必要な子どもばかりに先生が関わっていると、他の子どもは「えこひいきしている」と感じることがあります。そして、大人の注意を引こうとする行動をするかもしれません。中には、お手柄を見せようと「先生、○○君が席を立っています」と「チクリ魔」と化してしまう子もいます。

ですから学校の先生は、障害や特性の有無に関係なく、それぞれの子どもに合わせたオーダーメイドで、褒めポイントを変えてほしいと思います。そうすればどの子どもも「先生は自分のことをよく見てくれている」と感じ、クラス運営も上手く行くようになると思います。

 

執筆者プロフィール

立石美津子(たていし みつこ)

著述家
20年間学習塾を経営、現在は著者・講演家として活動。
自閉症スペクトラム支援士

『一人でできる子が育つテキトーかあさんのすすめ』
『はずれ先生にあたったとき読む本』
『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』
『動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな』
など著書多数

日本医学ジャーナリスト協会賞大賞受賞作『発達障害に生まれて(ノンフィクション)』のモデル
Voicy  https://voicy.jp/channel/4272
オフィシャルサイトURL https://tateishi-mitsuko.com/
テキトー母さんのすすめ(アメブロ) https://ameblo.jp/tateishi-mitsuko/

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