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ヤングケアラー問題を知る(第一回)

はじめまして。一般社団法人ヤングケアラー協会で理事を務める、小田桐 麻未です。

最近テレビや新聞などのメディアで「ヤングケアラー」という言葉を聞く機会が増えたと思いませんか。

2020年に厚生労働省がヤングケアラーの実態調査を行ったところ、この日本社会には非常に多くのヤングケアラーが存在することが明らかになりました。この実態調査の結果をきっかけに、国や地方自治体がヤングケアラーの支援体制の整備を急速に進めようとして3年ほどになります。

とはいえ、そもそもヤングケアラーとはなんなのか?実際にはどんな生活をしているのか?周囲にいる人や社会はどう関わっていけばいいのか?そんなことを、このコラムではお伝えしていけたらと思います。

日本におけるヤングケアラーの定義

ヤングケアラーとは、本来大人が担うと想定されている家族のケアを、日常的におこなっている子ども・若者のことを指します。日本では18歳以下を「ヤングケアラー」、19歳〜大体30代までを「若者ケアラー」と呼んでいる状況です。上述の実態調査では、例えば中学校だと17人に1人、つまり1クラスに1-2人のヤングケアラーがいるということが明らかになっています。

ヤングケアラー/若者ケアラーは家事、家族の身体的・精神的・医療的なケア、きょうだいのお世話、家族のために通訳や労働をするなど、人それぞれ様々な家族のケアを行っています。彼らは若くして家庭を支える大きな役割を果たしています。その分、重たいケアの責任を引き受けており、そのことが本人の学業や就労、メンタル、将来などに大きな影響を及ぼすことがあります。

将来的に若者ケアラーは2030年には318万人になると予測されており、ケアによって労働に影響がでると仮定すると、労働力の減少が及ぼす日本の経済損失は計り知れません。

自己紹介。ケアの経験と今思うこと

私自身もかつてヤングケアラーであり、今でも若者ケアラーです。

私が高校生の頃に親がうつ病を発症してしまいました。元々ひとり親家庭だった背景もあり、大学を卒業するまで以下のような生活を送ってきていたのです。

・親は症状がひどいと働けないため、金銭的な不安が常にあった。そのため平日も休日もアルバイト漬けで、生活費と学費を稼いだ。→自分のしたいことができない(部活、勉強、友人と遊びに行くetc…)

・思うように動けない親に代わり家事をする→日々の時間が家事で消えていく

・気持ちが不安定になってしまう親の話を日々受け止め続ける。また、親の気持ちを安定させようとできるだけ一緒にいようとする→深夜まで話が続き寝不足になることもあった。また親の気持ちが落ち着くことが最優先となっていたので、自分もだんだん辛くなっているのにそのケアは後回しにしてしまい、結果自分も不安定になってしまう。

一般的な多くの子どもたちが通るであろう大切な成長過程、例えば部活や遊びを通し友人と良好な関係を構築する練習をしたり、甘えやわがままを周囲にぶつけながら受け止めてもらいながら成長したり、自分の好きなことに向き合い自分とは何かを探したり……ということができないまま大人になってしまったなと、30歳を超えた今思います。

「こんな社会はおかしい!」に向き合う

高校生の頃から「こんな社会はおかしいのでは?」と感じていました。これまで真面目に頑張っていても病気を抱えた途端に何もかもうまくいかなくなること、またその家族というだけで私自身の人生がなくなってしまうこと。そんなの絶対おかしいはずです。

しかし私は幸い周囲の助けに恵まれて、学校に通えましたし卒業後に就職することもできました。社会人になってから親が別の疾患を発症しましたが……なんとか元気に働けています。

であれば、私のことを助けてくれた人たちへの恩を返すためにも、今も苦しんでいる人たちのために何かしていきたい。あの頃思っていた「こんな社会はおかしいのでは?」という憤りに向き合ってみようと思い、一般社団法人ヤングケアラー協会の立ち上げに参画しました。

協会では当事者の方達の生活やキャリアに関する相談窓口(LINE/zoom)を運営するほか、当事者の方達を集めたイベントを実施しています。また自治体と連携し、ヤングケアラーコーディネーターとして当事者の発見〜生活の変容までをサポートしています。

ヤングケアラー問題は高齢化社会の介護問題にも通じる

私が声を大にして言いたいのは、決して疾患や障害を持つ人が悪いわけではないこと、そしてそれを家族として支えようとすること自体はとても素敵なことだということです。ケアラーは家族を大切に思う気持ちがあるからこそ、ケアの比重が大きくなりすぎてしまうことがほとんどです。

またそれは、高齢者の介護においても同様かもしれません。これから少子高齢化や核家族化が進むと、どんな人にとっても高齢になった家族の介護という問題は身近になり、避けて通れるものではないでしょう。

だからこそヤングケアラーについて書いていくこの連載を、「もしかしたら自分がなるかも?」「周りにいる人がそうかも?」と自分に関係があることとして読んでいただければうれしいなと考えています。

執筆者プロフィール

小田桐 麻未(おだぎり あさみ)

元ヤングケアラー・現若者ケアラー。
2014年北海道大学卒業後に株式会社ラクーン(現ラクーンホールディングス、東証プライム)に入社し、新規事業の営業や人事業務に従事。 国家資格キャリアコンサルタント、メンタルヘルスマネジメント検定Ⅱ種取得。
学生時代から今に至るまで複数に渡り、家族が精神疾患を発症。
自分の人生とケアを両立させようとするも困難も多くあり、「ケアラーが自身の生活や興味・適性にあったキャリアを形成し、納得できる人生を歩めるように」と強く思い、一般社団法人ヤングケアラー協会の立ち上げから参画、理事を務める。
相談対応・就職支援・組織運営全般をメインに活動中。

【講演実績】
自治体 ヤングケアラー支援体制構築に係る講演会
児童養護施設
ロータリークラブ
大学 等
【監修】
テレビ番組 複数
【ホームページ】
一般社団法人ヤングケアラー協会:https://youngcarerjapan.com/

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