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障害者を支える制度や仕組みの疑問に答えるシリーズ-障害者手帳編

2024.03.06

「親なきあと」相談室主宰の渡部伸です。障害のある方や引きこもりの方とそのご家族に関わるさまざまな制度や仕組みを、社会保険労務士/行政書士として、また知的障害のある子を持つ一人の親として、Q&A形式で解説していきます。今回は「障害者手帳」について、多くの方が疑問に思われたり迷われたりしているだろうことを取り上げていきます。

障害者手帳にはどんな種類がありますか?

身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の3種類です。身体障害者手帳は身体に障害のある人、療育手帳は知的障害のある人、精神障害者保健福祉手帳は精神疾患のある人(発達障害やてんかんを含む)が対象となっています。手帳の種類によって、申請方法にも違いがあります。

愛の手帳と療育手帳は同じものですか?

同じものです。療育手帳は地域によって呼び名が異なる場合があり、たとえば東京都は愛の手帳、青森県や名古屋市は愛護手帳という名称です。療育手帳には国が示したガイドラインをもとに、都道府県や政令指定都市などの各自治体がそれぞれ独自の運用をしているという特徴があります。手帳名だけではなく、等級の判断基準やそれによって受けられるサービスも自治体によって様々。この自治体による格差はたびたび問題になっています。

手帳の等級によって受けられるサービスは違いますか?

たとえば医療費助成制度は、手帳の等級によって対象となる範囲が決まっています。これは自治体によって多少違いがあります。東京都を例にとると、身体障害者1級・2級、愛の手帳1度・2度、精神障害者保健福祉手帳1級が対象で、本人の所得により医療費が1割負担、もしくは負担なしになります。そのほかには、交通費の割引や税金の控除などで違いがあります。

知的に遅れのない発達障害でも手帳は取れますか?

精神障害者保健福祉手帳の対象となる可能性があります。最初に精神科を受診してから6ヶ月経過していれば申請可能です。

障害者手帳取得のメリットとデメリットは何ですか?

メリットの大きい障害者手帳ですが、デメリットを心配される方も多くいいらっしゃいます。結論としては、デメリットは特になく、取得のメリットが大きい制度となっています。

-障害者手帳取得のメリット

医療費の助成や割引、控除などの経済的なメリットに加えて、働く場面での選択肢が広がるという大きなメリットがあります。障害者雇用で働くためには、手帳があることが条件となります。取得できるのであればぜひ取得してください。

-障害者手帳取得のデメリット

デメリットは基本的にはありません。周囲に手帳を持っていることを知られたくない、といった心理的な負担を感じる人はいるかもしれませんが、サービスを利用するとき以外、他人に持っていることを知られることはありません。普段はしまっておけば大丈夫ですし、特性や困りごとに合わせた必要なサービスを受けるための手続きだと考えると良いでしょう。

障害者手帳-まとめ 

障害者手帳取得には書類や写真などの準備に手間がかかりますし、自治体によっては交付されるまでに1~3ヶ月程度かかったりすることもありますので、面倒に思え取得をためらう方もいらっしゃるかもしれません。でも、一度取得してしまえば(更新手続き等は必要になりますが)、税金の控除や公共料金の割引などが受けられ、生活するうえでの助けとなるでしょう。また、働くうえでも障害者求人に応募ができるようになるため、選択肢が広がります。

ご自身やご家族が障害者手帳取得の条件に合致される場合は、ぜひ自治体の窓口に一度ご相談されてみてはいかがでしょうか。

 

執筆者プロフィール

渡部伸

1961年生、福島県会津若松市出身
「親なきあと」相談室主宰
東京都社会保険労務士会所属。
東京都行政書士会世田谷支部所属。
2級ファイナンシャルプランニング技能士。
世田谷区区民成年後見人養成研修終了。
世田谷区手をつなぐ親の会会長。

主な著書
障害のある子の「親なきあと」~「親あるあいだ」の準備
障害のある子の住まいと暮らし
        (ともに主婦の友社)
まんがと図解でわかる障害のある子の将来のお金と生活(自由国民社)
障害のある子が安心して暮らすために~知っておきたいお金・福祉・くらしの仕組みと制度(合同出版)

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