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学歴エリートでも仕事ができない?高学歴な発達障害者の生きづらさとは

2024.03.27

昨年10月に拙著『ルポ 高学歴発達障害』がちくま新書から刊行されました。この本は自分も発達障害である私が、高学歴の発達障害当事者や大学教員、精神科医、支援団体へのインタビュー取材を通して、理解が得られにくい「高学歴発達障害者」の生きづらさの実態に迫ろうとしたものです。高学歴の発達障害当事者はもちろん、発達障害でない人や身近に高学歴発達障害者がいる人にも読んでいただきたい一冊となっています。

高学歴な発達障害者はめずらしくない

学歴なんて関係ない世の中だ、と言われがちですが、大手企業に就職するには大学卒であることが必須である場合が多く、履歴書の段階で、学歴フィルターでふるい落とす企業もまだまだあります。このことから分かるように学歴は今でも有効な判断基準で、だからこそ多くの受験生が少しでも偏差値の高い大学に行こうと勉強を頑張るわけです。

そして、発達障害者の中にも高学歴の人はたくさんいます。高学歴な発達障害者の中には、自分にはできないことが多いからせめて勉強だけでも頑張ろうと良い大学に入ったり、過集中の特性からペーパーテストの成績が良かったりする人もいます。また、他人より勉強ができることから自分も周囲も社会に出て壁にぶつかるまで障害に気づかないまま、という人もいます。

高学歴だからといって「勝ち組」ではない

発達障害があっても高学歴ならば良い会社への就職も簡単で、人生勝ち組なのではないかと思われがちですが、そうとは限りません。例えば学生時代までは苦手な人がいても付き合わなければ問題ありませんでしたが、社会に出て働き始めると合う人合わない人いろいろな人と付き合う必要があります。そのため、対人関係に課題があることが多い発達障害者は、高学歴であっても、社会に出た途端に職場での人間関係につまずくパターンが多いです。

他にも、ADHDの特性からケアレスミスが多く、上司に叱責され続け会社に行けなくなってしまったり、ASD特有のロジカルシンキングが、空気が読めないやつだ、社風に合わないと、パワハラを受けたりしてしまう人もいます。

「なんで高学歴なのに仕事ができないの?」と言われがち

高学歴発達障害者で最も多い悩みが「なんであの人は高学歴なのに仕事ができないの?」と職場の人たちに言われがちなことです。面と向かって直接言われなくても、自分が他人より仕事ができていないことが分かるから、そう言われているのではないかと不安になる人もいます。

そして、上司に学歴コンプレックスがあると、嫌味を言われる確率が高まります。取材した中には「なんでお前は俺が行きたかった大学を卒業しているのに仕事ができないんだ」と言われた経験のある人もいました。

さらに、高学歴であることが当事者本人のアイデンティティとなっている場合は、仕事ができない自分とのギャップに折り合いがつけられず、なんで自分はこんなに勉強の面では優秀なのに仕事ができないのだと葛藤に苦しむこともあります。

高学歴な発達障害者のすべてが生きづらさを感じているわけではない

高学歴な発達障害者について、ネガティブなエピソードを多く紹介してきましたが、大事なこととして、高学歴発達障害者全員が生きづらさを感じているわけではありません。取材した中では自分の得意分野を見つけてそこで生き生きと仕事をして毎年昇格している人もいました。

他には、経営者の息子として生まれ会社を継ぎ、自分が社長になってからは「ミスをしてもいい」という紙を社員が集まる場所に貼るなど、会社の改革に取り組み、それまで離職率の高かった会社をほぼ離職率ゼロにしたという人もいました。発達障害当事者が働きやすい会社は健常者も働きやすい会社なのです。

 


このテーマについて詳しく知りたくなった人は……

ぜんちコラムのレギュラーコラムニストである姫野 桂さん渾身のルポタージュ!『ルポ 高学歴発達障害』ちくま新書をぜひ読んでみてください。

筑摩書房による紹介ページ⇒https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480075826/

 

執筆者プロフィール

姫野桂

フリーライター。1987年生まれ。宮崎市出身。
日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをし、編集業務を学ぶ。卒業後は一般企業に就職。25歳のときにライターに転身。現在は週刊誌やウェブなどで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。猫が好き過ぎて愛玩動物飼養管理士2級を取得。趣味はサウナと読書、飲酒。

著書
『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(イースト・プレス)
『発達障害グレーゾーン』(扶桑社新書)
『「発達障害かも?」という人のための「生きづらさ」解消ライフハック』(ディスカヴァー21)

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