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障害者を支える制度や仕組みの疑問に答えるシリーズ-成年後見制度編 第2回(全2回)

前回に引き続き、「成年後見制度」について解説していきます。成年後見制度は大切な制度ですが、万能ではなく、メリットもあればデメリットもある制度です。また、現在のところ、原則一度始めたらやめられない、利用に覚悟のいる制度でもあります。正しく理解したうえで、ご本人やご家族にとってより良い選択をしていただきたいと願っています。

後見人の不正が心配です。実際のところどうなんでしょうか?

確かに後見人による不正は存在します。ただ、その数は減っています。

2014年の後見人による横領金額は、過去最高の約56億7千万円でした。その内訳は、弁護士ら専門職によるものが1~2割、8~9割は専門職以外、つまり家族、親族による不正がほとんどとなっています。専門職の不正は100%悪意があり、額も大きいので、新聞記事などに取り上げられやすいのですね。家族の場合は、制度のことをよくわからないまま後見人に就任し、結果的に不正になってしまうことがあるようです。

その後、後見制度支援信託や後見監督人といった、不正を防ぐ制度に力を入れるようになり、2015年以降は減少。2023年の被害額は約7億で、2014年の1/8程度になっています。

参照資料:後見人等による不正事例(平成23年から令和5年まで)

後見人に支払う金額はいくらですか?

本人の財産の額で後見人報酬は決まります。成年後見人の報酬は、後見人が勝手に決められるものではありません。家庭裁判所の審判によって決定します。その金額も目安が示されていて、東京家庭裁判所のホームページによると、基本報酬は月額2万円、管理財産額が増えると報酬も増える仕組みとなっています。

また、財産額による報酬以外に、後見人の行った事務において,身上監護等に特別困難な事情があった場合には,基本報酬額の50%の範囲内で相当額の報酬がプラスされる、となっています。

親族が後見人で、報酬の申立てをしなければ、後見の費用は本人からは支払われません(実費は除く)。ただし、本人にある程度の財産がある場合などに、家庭裁判所が後見監督人を選任することがあります。後見監督人の基本報酬のめやすは,管理財産額が5000万円以下の場合には月額1万円~2万円、管理財産額が5000万円を超える場合には月額2万5000円~3万円となっています。(東京家庭裁判所では、本人の現金などの財産が1000万円以上となる場合に監督人を選任する方針をとっているとのこと。ただし、後見制度支援信託などの不正を防ぐ制度を利用し,成年後見人の手元で管理するお金を500万円程度に設定したような場合には、監督人を選任しないことがあります。)

成年後見制度を始めたあとに、途中でやめることはできますか?

今は原則、一度始めたらやめられません。

成年後見制度をやめることができるのは、本人の判断能力が回復したときです。たとえば精神障害のある方が後見制度を始めたところ、治療の甲斐あって寛解したといった場合は、判断能力が回復した診断書を提出して、成年後見制度をやめることができます。それ以外は本人が死亡するまで後見制度は続きます。

なるべく利用を遅らせたい場合、どのくらい遅らせられますか?

できれば使いたくない、まだまだ子どもの面倒はみられる、という自信があったら「待つ」という選択肢も有力です。使いたくないのに、いやいや使う制度ではありません。ただし、本人の判断能力が不十分であれば、いつかは使わなければいけない時がきます。私はこの質問には、次のようなアドバイスをしています。

「まず、両親がいれば必要ありません。もしも親がひとりだけで、その方が自分の健康に不安が出てきたときには後見制度の検討をしてください。」

また、本人にきょうだいがいて、後見の手続きを託せるようなら、両親が亡くなったあとでも構わないと思います。

後見制度が必要になった場合、相談先はどこになりますか?

多くの自治体では、成年後見センターや権利擁護センターという名前の、後見制度について相談できる窓口が設置されています。そこに行けば後見制度の内容や手続きについて教えてもらえます。また、親の会などに加入していれば、先輩の会員で詳しい方がいたりする可能性があるので、そこでもいろいろな情報がもらえると思います。いざという時に慌てないように、今のうちからお住まいの地域ではどこに行けば相談できるのか、ぜひ調べておいてください。

成年後見制度は今後変わっていくのでしょうか?

一度始めたらやめられない、というルールが変わりそうです。

成年後見制度が障害者の家族から敬遠されている最大の理由は、本人が亡くなるまでこの制度が続くこと、途中でやめられないことだと思います。しかし、現在成年後見制度の見直しの議論が行われており、スポット的な後見制度の利用、つまり相続手続き、銀行口座の解約、不動産売却、施設の入所契約など必要な時だけ本人に代わって後見人が手続きをして、その後は辞任し制度利用も終了するという方向に変更される見通しです。

他にも、後見人が支援する行為の範囲を限定する、状況に応じて後見人の交代を可能にするなども検討事項となっていて、2026年度までに民法などの関連法改正を目指すとのことです。そうなれば、後見制度の利用を控えていた最大のネックがなくなり、必要な時にはしっかり支援を受けられることになります。私たちにとっても大きな安心材料になるのではと期待しています。

執筆者プロフィール

渡部伸

1961年生、福島県会津若松市出身
「親なきあと」相談室主宰
東京都社会保険労務士会所属。
東京都行政書士会世田谷支部所属。
2級ファイナンシャルプランニング技能士。
世田谷区区民成年後見人養成研修終了。
世田谷区手をつなぐ親の会会長。

主な著書
障害のある子の「親なきあと」~「親あるあいだ」の準備
障害のある子の住まいと暮らし
        (ともに主婦の友社)
まんがと図解でわかる障害のある子の将来のお金と生活(自由国民社)
障害のある子が安心して暮らすために~知っておきたいお金・福祉・くらしの仕組みと制度(合同出版)

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