fbpx

登校しぶり、どうする?

新学期がはじまって、2か月が経ちました。新しい学校やクラスにも慣れはじめ、子どもたちの緊張がゆるんでくる時期。その反面、連休が重なり、家族との楽しい時間が増えたり、生活リズムが崩れたりすることで登校しぶりが出はじめることもあります。

朝の支度に時間がかかる、癇癪を起こす、遅刻が増えた、毎朝「学校に行きたくない」と言う・・・このような、登校しぶりの傾向が出はじめると、親としてとても心配です。無理をさせずに休ませたらいいのか?無理にでも行かせた方がいいのか?「不登校」という言葉が、頭をよぎってしまいます。

実はわたしも、昨年は葛藤の毎日を過ごしていました。当時中学2年生だった息子に、登校しぶりが出はじめたのです。学校から電話がかかってくる日が多くなり、早退や欠席が増え、登校できても保健室や図書室で過ごす毎日が続きました。

登校しぶりや不登校の原因は、ひとつではありません。特に、発達障害やグレーゾーンの子どもの場合、行きたくない理由をうまく言葉にできないことがあります。嫌なことがあっても忘れてしまったり、ネガティブな感情があっても癇癪や暴言で表現してしまうのです。また、感覚過敏などの様々な特性が影響して、いままで我慢していたことがあふれてしまうこともあります。

4月から中学3年生になった息子は、2年生の3学期からまたクラスに戻れるようになり、最近は授業やお友達とのできごとを楽しそうに話してくれるようになりました。

今日は、登校しぶりへの対処法や家庭での関わり方を考えてみましょう。わたしが自宅で実践したこともお話ししたいと思います。

子どもから「学校に行きたくない」と言われたときの理由の聞き方

子どもから「学校に行きたくない」と言われたら、誰もがドキっとしますよね。先生やお友達とのトラブル、いじめがあるんじゃないか?などと心配になり、行きたくないと理由を聞き出したくなってしまいます。

でも、聞き方には注意が必要です。特に、発達障害やグレーゾーンの子どもたちは、「どうして?」「何で?」と聞かれると、(自分は責められている)と感じてしまうことがあるからです。また、「どうして?」「何で?」というあいまいな質問が何を指しているのか理解できず、「何でもない」という答えになってしまう場合もあります。

さらに、感情コントロールが難しい子どもは、嫌な経験やネガティブな感情を言葉に出すことに抵抗があります。行きたくない理由や原因が些細なことだったとしても、言葉で表現することができず、代わりに癇癪や暴力などで表現してしまうことがあります。

質問を絞る

子どもの「学校に行きたくない理由」を聞き出したい時には、具体的な人の名前や場面(授業中、給食、休み時間、お昼休み、放課後など)を区切って聞いてみましょう。

これは、時系列にひとつひとつ聞いていくということではありません。子どもだけでなく大人にとっても、嫌なことを思い出したり、口にだしたりすることはあまりいい気分じゃありませんよね。子どもに質問する時には、子どもの性格や特性、普段の観察をした上で、質問を絞って聞きましょう。

先生等に学校での様子を聞く、話を聞いてもらう

もし協力が得られるならば、担任に学校での様子を聞いてみましょう。自宅での様子と学校での様子や態度が、親も先生もお互いに信じられないほど変化する子どももたくさんいます。子どもへの関わりや環境などをすり合わせることで、子どもの登校しぶりの原因が少しずつ見えてくることがあります。

特に、新学期は周りの環境が大きく変わりますので、今までお世話になった先生や子どもが信頼している人から様子を聞くことは、子どもへの関わりの大きなヒントになります。わたしも、息子の登校しぶりの時には、担任の先生に様子を聞いたり、今後の対応のすり合わせをさせていただきました。

自宅と学校とで大人の対応が変わることで混乱する子どももいます。「〇月までは、こういう方針でいく」というような、期限や方針を先生と決めて子どもを観察したりサポートすることが、子どもの混乱を防ぎ、安心感を増やすことにもつながります。

親としても、相談できる人や同じ方向を見て考えてくれる人がいると心強いです。担任以外でも、養護の先生やスクールカウンセラーや習い事の先生など、信頼できる人に話を聞いてもらうことで、不安が軽減したり、子どもへの関わりのヒントに気づけたりすることがあります。

コロナ禍と新学期の共通点

わたしは仕事柄、たくさんの親御さんのお話を聞く機会がありますが、コロナ禍では、これまでの癇癪や他害のお悩み以上に、登校しぶりや不登校のご相談が多かったように思います。

「コロナ禍」と「新生活」には、「環境が変わる」という共通点があります。今までの生活リズムが変わったり、新しい目に見えないルールがプラスされることに、子どもが不安を抱いている可能性があるということを知っておきましょう。わが家も、当時休校がはじまった時には、息子とぶつかったりすれ違ったりすることが多かったです。

小学校高学年にもなっていれば新しい環境、新しい生活になったとしても、今後毎日同じことの繰り返しになるわけだし、言えばわかるよね、と大人は思ってしまいます。でも、発達障害やグレーゾーンの子どもたちは、毎日同じことだったとしても、その工程を理解していなかったり、周りにいる人が変わったりするだけで「同じこと」だとは思えなくなってしまうのです。

そういった子どもは、言葉で指示されるよりも絵や文字など、目に見えるように指示を出された方が理解しやすい子どもかもしれません。言葉でいろいろ伝えるより、絵や文字で伝えることで、不安が少なくなり、状況が好転する可能性がありますよ。試してみてくださいね。

学校へ「行く」「行かない」に注目しすぎないのも大事

子どもに登校しぶりの傾向が見られた時、無理をさせずに休ませてあげたい気持ちと、休ませたらクセになってしまうのではないかと心配する気持ちの間で、揺れ動いてしまいますよね。さらに、今日一日だけ行きしぶりがあるということではなく、明日も明後日も子どもの「行きたくない」という状態が続くため、毎日の選択に迷いが出てきてしまうこともあるでしょう。

ただ、学校へ「行く」「行かない」という結果だけに注目するよりも、「行きたくない」と言った子どもの不安や普段のサポートを見直すことが必要です。なぜなら、最初にお話ししたように、理由を説明することが難しかったり、今まで我慢してたことが爆発した状態である可能性があるからです。

 

子どもが安心して過ごせる場所やリラックス方法を一緒に見つける

さらに、発達障害やグレーゾーンの子どもは、自分の疲れている状態を把握することや、体や心を休めるということがどういうことか?どのような方法をとればいいのか?を分かっていない場合があります。まずは、子どもが安心して過ごせる場所やリラックス方法を一緒に見つけることからはじめましょう。子どもの特性による、負荷や負担を減らしてあげることもオススメです。

例えば、わが家の場合はこんなことを意識しました。

  • 晩ご飯の時は、子どもの好きなテレビを見て一緒に笑う
  • お風呂につからせる
  • 子どもの話を最後までさえぎらずに聞く

最後が一番難しいのですが、息子の話を「そっか~」「そうだんだね」「そんなことがあったんだね」と聞いていくうちに、学校へ行きたくない理由を話してくれるようになりました。

子どもの話を最後まで聞くことは、登校しぶりの原因を見つけることだけでなく、信頼関係を築くことにもつながります。

息子の登校しぶりの原因は、当時の「環境」によるものでした。本人の努力や親の力ではどうすることもできないものでしたが、結局中学2年生の3学期からは、またクラスで授業を受けられるようになったのです。

登校しぶり、どうする?ーまとめー

登校しぶりという現実は、親も子どもも苦しいものです。でも、ほんの少し視点を変えてみることで、状況が変化することがあるかもしれません。また、自分のストレス解消やリラックス方法を見つけることは子どもがこの先大人になっても必要なスキルであり、人との信頼関係を築いておくことは自立への一歩にもなります。

参考になりましたら幸いです。

執筆者プロフィール

浜田悦子(はまだ えつこ)

発達障害・グレーゾーン専門
子どもとママのための家庭療育アドバイザー

繰り返す問題行動に怒られてばかりの子どもと 孤独な子育てに苦しんでいるママに寄り添い、 子どもの自己肯定感とママの子育ての自信を取り戻し 笑顔に導く家庭療育アドバイザー。
自身の子どもが発達障害と診断されたことをきっかけに、発達支援センターの指導員へ。以来、約2,000人以上の親子に関わる。
大学、発達支援センター、放課後等デイサービスでの講演・研修多数。

【著書】
『発達障害&グレーゾーンの子どもを「急かさず」「怒らず」成長を引き出す言葉かけ 』浜田悦子 (著), 汐見稔幸 (監修) 実務教育出版

【執筆・監修】
ユーキャン 子ども発達障がい支援アドバイザー講座
ユーキャン 思春期発達障がい支援アドバイザー講座

【メディア掲載】
毎日新聞、中日新聞、朝日新聞、ひよこクラブ、朝日新聞 WEEKLY AERAなど

この執筆者の記事一覧

関連記事

おすすめの記事