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ダウン症のある兄は、今年還暦を迎えた

今年、還暦を迎えた兄、ター君にはダウン症があり、15年前から障害者施設で暮らしています。穏やかに過ごしていると書きたいところですが、頑固さが増し、スタッフやヘルパーさんと常にバトルしているようです。ター君にもそれなりの言い分があるのですが、うまく言語化できず、お互いにイライラしてしまうようです。

旅先で還暦を祝いました。

還暦を迎えてすこぶる元気な兄

子どもの頃から「ター君は20歳まで生きられない」と両親から聞かされて育ちましたが、妹である私には、「ター君は絶対に長生きするに違いない」という根拠のない自信がありました。

どんなに両親が悲観しても、私と兄は楽観的でした。青年期からずっと「立派な大人になるんだ」と豪語していた兄は、今やナイスシニアの領域に達しています。

父は63歳で、母は83歳で、早々と天国に戻ってしまいましたが、息子の還暦を一番祝いたかったのは両親だったでしょう。私にしてみれば、予感的中といったところですが、ター君は還暦を迎えた現在もすこぶる元気です。

ダウン症の子は免疫力が弱いとされているけれども

ダウン症のある方は多様なので一言では言い表せませんが、免疫力が弱いとされるのは幼少期が比較的多いそうです。そこからグイグイと免疫力が上がっているのではないかと思うほど、兄はウイルスや細菌に対する抵抗力が高いです。

しかも、危機管理能力にも長けており、こんにゃくやゼリー、お餅や飴といった喉に詰まりやすいものは頑なに口にしません。いつも「食べたら死ぬ」と予言を告げるので、誰も食べさせません。

脚が痛くて歩けないと泣き喚くのですが、危ないと思ったら自転車や人をうまく避けたりします。歩けるのではないかと兄に目線を送ると、再び歩けないアピールをする策士でもあります。

コロナ感染症が猛威を振るっていた頃、施設でクラスターが発生しても兄だけが陰性でした。施設のみんなが回復した頃に遅れて感染しましたが、たった2日で完治しました。私は兄から感染し、4か月間声が出ないという後遺症に悩まされました。

兄と私

この際長生きのギネス記録に挑戦だ

よく考えると、私の方が幼少期から兄よりも遥かに免疫力が低く、体力もありませんでした。明らかに兄の方が元気です。

仏壇に向かって両親に「ダウン症だから免疫力が低いわけではないみたいだよ」と語りかけながら、なんとなくきょうだいとして損をしてきたような気がします。兄を育てることに一生懸命過ぎて、私の弱さは両親には見えていなかったのではないでしょうか。「きょうだい」あるあるかもしれません。

今さら言っても仕方ありませんが、この際兄には長生きしてもらって、ギネス記録に挑戦したいと、妹は勝手に思っています。

 

執筆者プロフィール

持田恭子

1966年生、東京都出身。ダウン症の兄がいる妹。
海外勤務の後、外資系金融機関にて管理職を経て、一般社団法人ケアラーアクションネットワーク協会代表理事に就任。父を看取り、親の介護と看取りを経験し、親なきあとの兄との関係性や、きょうだい児の子育てについて講演を多数行っている。障害のある兄弟姉妹がいる「きょうだい」を対象に「中高生のかたり場」と「きょうだいの集い」を毎月開催。その他に、きょうだい、保護者、支援者が意見交換をしながら障害者福祉と高齢者介護の基礎知識を深めるエンパワメントサポート講座を開講。親子の気持ちが理解できる、支援者として家族支援の実態がつかめる、と好評。自分らしく生きる社会づくりを目指している。

【講演実績】
・保護者向け勉強会(育成会・NPO法人・障害者支援施設)
・市民フォーラム
・大学、特別支援学校(高等科)

【職員研修】
・外資系銀行
・社会福祉事業団

【メディア実績】
・NHK Eテレ「バリアフリーバラエティ番組バリバラ」
・NHK Eテレ「ハートネットTV」
・その他ニュース番組など

【著書】
自分のために生きる
電子書籍Kindle版 https://amzn.to/3ngNMS6

【ホームページ】
https://canjpn.jimdofree.com/

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