fbpx

早く知りたかった!相談支援事業所のススメ

発達障害(ASD)と複雑性PTSDのある私はこの春から、「相談支援事業所」という福祉サービスを利用しはじめました。これがとても頼りになり、こういうサービスがあることをなんで誰も教えてくれなかったんだろう! と思ったので、今回はそのお話をしたいと思います。

「基本相談支援」とは

相談支援とは、障害者の相談を受けること自体を支援とする福祉サービスです。相談支援サービスにはいろいろあり、とても複雑なのですが、私は「相談支援事業所」で提供する「相談支援」のうち「特定相談事業」、すなわち「基本相談支援」と「計画相談支援」のサービスを受けました。

※参考 厚生労働省「障害者の相談支援等について」4p https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000806678.pdf

 

「基本相談支援」は、全般的な聞き取りから始まる相談支援のベース。地域相談支援・計画相談支援への起点というイメージです。日常生活、医療、教育・進路、就労など、幅広いテーマについて相談に乗ってくれ、そこに出てきたニーズに応じて、個別の支援(私の場合は「計画相談支援」)につないでくれます。

私は最初、就労継続支援事業所B型の利用をしたくて相談支援事業所と契約しただけで、相談支援のシステムなんてまったく知らなかったのです。このため、こんなふうに痒いところに手が届く支援があるなんて、とても驚きました。

「ゆりかごから墓場まで」、障害者の人生に伴走してくれる

私は支援員さんとこんな会話をしました。

宇樹:
基本相談支援では、話を聞いてくれて、いろいろな支援につないでくれるんですよね? どういうことまで相談できるんですか? たとえばB型を使いたいとかだけじゃなくて、障害者だけど個人事業主としてキャリア開拓していきたいけどどうしよう、みたいな話とか、大学院行こうかな? みたいな話も聞いてくれるんですか? つまり、障害者向けのよろず相談、とりあえずまずはここに来ればいい的な、ワンストップサービスみたいな感じで?
支援員さん:
そうです、もちろんです、なんでもお聞きできます。利用者さんの人生に伴走するような感じです。
宇樹:
えっ… 心強い… なんでも…? なんでもですか? たとえば私が高齢者になっても?
支援員さん:
そうです! つまり、「ゆりかごから墓場まで」っていうんですかね、そういう感じです。
宇樹:
ほんとですか! 料金は?
支援員さん:
ご利用者さんの自己負担はありませんよ※。
宇樹:
ほんとですか!? なんだー! 基本相談支援はまさに私がずっと欲しかったサービスですよ。むしろ、なんでこういうのがないのかなって思ってました。ほんとに早く知りたかったです!!

※自己負担がないかどうかは事業所によるかもしれないので、必ず個別に確認してください。

基本相談支援について、国や自治体の側から教えてほしい

基本相談支援は、「どんな支援を受けたらいいか」というところから話を聞いてくれます。「支援を受けるための支援」「福祉ビギナーのための福祉」と私は理解しました。

ということは、基本相談支援の存在って、すべての障害者に知らされているべきではないですか?だって、誰でも本来はただのいち障害者であって、福祉のプロなのではありません。福祉のことなんか知るわけないですよね。医療にはつながっていても、医師は医療の専門家であって、地域や福祉の専門家ではないですから。

私は、発達障害者が福祉につながるための本まで書いた障害者で、障害者歴も10年を超します。インターネットも駆使し、自治体のたよりも読み込み、かなりの情報強者の側にいる自覚もあるのに、こんなサービスがあるなんて今までまったく知りませんでした。

あまり被害的になるのも良くないとは思うのですが、福祉に関する情報がここまでアクセスしづらいのって、正直、ちょっと「わざと」なのではないかと思ってしまったりします。以前も、精神科に10年ぐらい通っている中で、自立支援や精神の手帳、障害年金について、病院でも自治体でも、ひとことも、ひとっことも! 教えてもらえず、障害者仲間から口伝で教えられて初めて知ったことがありました。

こんな福祉サービスがありますよという紙1枚のチラシでも作って、病院や自治体の待合室に置いておいたり、自治体の広報で知らせるなど、やろうと思えばいくらでも方法はあると思うのです。

今なら自治体の公式LINEなんかもあったりしますよね。この記事に出会った障害のある方はラッキーですから、興味があったらぜひ「【自治体名】 相談支援」などでインターネット検索してみてください。

障害者への情報提供のありかたがもっと進んでいくことを祈りたいと思います。

 

執筆者プロフィール

宇樹義子(そらき よしこ)

1980年生まれ。早稲田大学卒。ASD、複雑性PTSD。
2015年に発達障害当事者としての活動を始める。LITALICO発達ナビなどで連載開始。 2024年、日本語教師としても活動を開始。複数メディアで活動を続けながら、次の発信を模索中。
現在、発達支援×日本語支援の分野に興味津々。

【著書】
#発達系女子 の明るい人生計画
―ひとりぼっちの発達障害女性、いきなり結婚してみました

80年生まれ、佐藤愛 ―女の人生、ある発達障害者の場合

この執筆者の記事一覧

関連記事

  • ADHDがある人のSNSとの付き合い方

    少し前になりますが、某タレントがSNSで他の芸能人を中傷するような投稿をして活動休止に追い込まれてニュースになりました。このタレントに発達障害があるかどうか、私は知る立場にありませんが、このニュースか …

  • 子どもの障害、夫婦の温度差

    シングルマザーの私が相談相手として適切かどうか疑問ではありますが「夫と発達障害児の子育てについて意見が合わず、喧嘩が絶えない」というご相談をよく受けます。 さて、ちょっと古いたとえかもしれませんが、結 …

  • コントロールできない!チック症はつらいよ

    「チック症」は「不随意運動」とも呼ばれる、自分の意思と関係なく体が動いてしまう症状です。私の息子には発達障害とチック症の両方があります。 就学前から小学校低学年頃に発症し、青年期には軽くなるといわれる …

  • 遠い親戚に我が子の障害について伝えておく理由

    葬祭行事への参加機会はどの人の人生にも、好むと好まざるとに関わらず必ずめぐってきます。おめでたい席である「冠婚」はさておき、「葬祭」についてはなるべく参加したくないと考える人もいるかもしれません。 で …

おすすめの記事

  • 子どもに伝わる視覚支援(準備編)

    発達障害やグレーゾーンの子どもへの指示は、絵カードや視覚的に指示を出すことが有効だと聞いたことはありませんか? でも、いざ絵カードを作っても子どもは見向きもしない、ということも少なくありません。そんな …

  • 電車の緊急停止ボタン、非常ベルを押してしまう子

    自閉症と知的障害のある息子ですが、思い返せば幼い頃、ボタンと言うボタン、その中で非常ベルボタンを押そうとしていた時期がありました。 それから、火事でもないのに消火器の安全栓を引き抜こうとしていた時期も …

  • ADHDがある人のSNSとの付き合い方

    少し前になりますが、某タレントがSNSで他の芸能人を中傷するような投稿をして活動休止に追い込まれてニュースになりました。このタレントに発達障害があるかどうか、私は知る立場にありませんが、このニュースか …

  • 子どもの障害、夫婦の温度差

    シングルマザーの私が相談相手として適切かどうか疑問ではありますが「夫と発達障害児の子育てについて意見が合わず、喧嘩が絶えない」というご相談をよく受けます。 さて、ちょっと古いたとえかもしれませんが、結 …