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暑いのに長袖、寒いのに半袖。気温にあった服装ができない子ども

今年も暑い季節がやってきました。暑くなると、気になるのが熱中症。子どもへ、水分補給や服装の調節を促したくなります。

でも、暑いのに長袖・長ズボンをはいているなど、服装の調節をしてくれないことが多くあります。特に、発達障害と診断されていたり、グレーゾーンと言われている子どもにはめずらしくないエピソードではないでしょうか。

わが家の息子も、そのひとり。親からすると「どうしてわざわざそんな服装をするの?」と、不思議でたまりませんが、実は色々な理由が隠れています。今日は、気温にあった服装ができない子どもについて考えていきましょう。

気温にあった服装ができない理由、「感覚過敏」「感覚鈍麻」

気温が高くなると、天気予報でも「熱中症に気をつけましょう」というアナウンスが流れます。熱中症は命に関わることもあるので、水分補給や涼しい服装など、子ども自身にも気をつけてほしいと思いますよね。

でも、「今日は暑いからね」と伝えても、長袖・長ズボンをはいていたり、わざわざ冬用の洋服を着ようとしたりするのはなぜでしょう?

理由は子どもによって様々です。単に、考えるのが面倒だからという子どももいると思いますが、季節にあった服装ができない理由のひとつに、「感覚の過敏さや鈍感さ」があります。いわゆる「感覚過敏」「感覚鈍麻」ですね。

感覚の過敏さ、鈍感さとは?

発達障害やグレーゾーンの子どもの中には、感覚「過敏」や「鈍麻」を持つ子どもがいます。

例えば、聴覚過敏を持っている場合、大きな音が流れる音楽の時間を嫌がったり、音楽室から脱走したりします。聴覚過敏は、「全ての音が同じ音に聞こえる」と言われていて、小さな音も大きな音も同じボリュームに聞こえてしまうのです。そのため、全ての音が重複して聞こえてしまうので、うるさいと感じることや先生や親の指示が聞き取れないこと、また、常に音が聞こえている状態なので、大きな声で話す、ボーっとしていることが多いというような特徴がみられます。

感覚過敏や鈍麻は、主に五感や体感に影響しますが、その中でも、触覚過敏は「肌に触れる」感覚なので服装にも大きく関わってきます。

触覚過敏を持っている場合、以下のように感じている場合があります。

例)
・洋服のタグや縫い目が肌に触れて痛い
・袖や裾、ゴムが肌に触れるのが不快
・風や太陽が肌に当たるのが不快
・汗をかくと、発疹ができやすい など

実はわたしも、タグは全部取りますし、縫い目が強く当たる箇所や肌との摩擦には発疹ができてしまいます。過敏とまではいかないけれど、ちょっと敏感なところがあるなぁと自覚しています。

また、不安を強く感じる子どもや複数の感覚過敏を持っている子どもは、肌を隠すことで安心を得ている場合もあります。

以前、発達障害のある当事者の方にお会いした時、真夏の猛暑日でしたが、長袖・長ズボン、フードにサングラスの恰好でいらっしゃいました。その時、「自分は感覚過敏をたくさん持っていて、こういう恰好じゃないと外出できないんだ」と教えてくださったのです。

子どもが気温にあった服装ができない時は、「感覚過敏や鈍麻はないか?」「不安に感じていることはないか?」を確認しましょう。

感覚過敏、触覚過敏は生きづらさの一つ

感覚過敏を持つ子どもの場合、タグを外したり、肌に触れにくい洋服を探してあげたりすることはできますが、それですべて解決するということは難しいでしょう。感覚過敏は、子どもが生まれた時から持っている感覚で直らないと言われています。
しかし、不安やストレスが軽減すると、感覚過敏もゆるむことがあります。感覚過敏をなおしてあげることはできませんが、服装だけに注目するのではなく、日々の生活の中で抱えている不安やストレスを見直すことも、おすすめです。

わが家の息子も、2歳くらいの時に親戚の結婚式でパリッとしたシャツを着せようとしたところ、ボタンがとれてしまうくらい泣き叫んで拒否をしていました。当時は知識がなく、理解してあげることができませんでしたが、糊のきいたシャツが痛かったのだと思います。

また、小学校高学年までは、ジーンズがはけませんでした。お店で試着して大丈夫だったから購入したのに、自宅ではこうとすると「痛い」「くさい」……

親としては、「履けたから買ったんじゃん!」と思ってしまいますが、これが生きづらさのひとつでもあるんですよね。

そもそも「気温に合わせて服装を変える」こと自体にピンときていない場合も

そもそも「気温によって服装を変える」ということを「理解」していない子どももいます。

子どもがまだ小さい頃、洋服は親であるわたしたちが用意していました。でも、子どもの学年があがるにつれて親は「自分でやりなさい」「考えなさい」と言いがちになります。今まで十分やってあげたし、そんなに難しいことでもない。もう自分でできるよね?「あなたならできる!」と思うからこそ、親として突き放してしまいます。

でも、発達障害やグレーゾーンの子どもたちの中には、毎日(回)同じ「パターン化」されたことに取り組むことは得意でも、そうでないこと(臨機応変、空気を読む、肌で感じる など)に取り組むことが難しい子どもがいます。

そういった子は「夏」といっても、涼しい朝には長袖を着ることがあり、テレビでは芸能人が季節先取りの恰好をしている、といったことがあまりピンときておらず、自分の服装はどこを見て何を基準に決めればよいのか分かっていないことが多いです。

このような場合には、天気予報の気温を見る癖をつけたり、気温が高くなるお昼休みに「上着を脱ごうね」など、判断の仕方やタイミングを細かく教えることもおすすめです。

(「暑くなったら〇〇」「寒くなったら〇〇」と声をかけがちですが、暑さ寒さの感覚は人によって違うので「気温」や「時刻」といった客観的な指標を示してあげたほうがいい場合が多いです。)

お子さんの特性によって、色々試してみてくださいね。

 

執筆者プロフィール

浜田悦子(はまだ えつこ)

発達障害・グレーゾーン専門
子どもとママのための家庭療育アドバイザー

繰り返す問題行動に怒られてばかりの子どもと 孤独な子育てに苦しんでいるママに寄り添い、 子どもの自己肯定感とママの子育ての自信を取り戻し 笑顔に導く家庭療育アドバイザー。
自身の子どもが発達障害と診断されたことをきっかけに、発達支援センターの指導員へ。以来、約2,000人以上の親子に関わる。
大学、発達支援センター、放課後等デイサービスでの講演・研修多数。

【著書】
『発達障害&グレーゾーンの子どもを「急かさず」「怒らず」成長を引き出す言葉かけ 』浜田悦子 (著), 汐見稔幸 (監修) 実務教育出版

【執筆・監修】
ユーキャン 子ども発達障がい支援アドバイザー講座
ユーキャン 思春期発達障がい支援アドバイザー講座

【メディア掲載】
毎日新聞、中日新聞、朝日新聞、ひよこクラブ、朝日新聞 WEEKLY AERAなど

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