fbpx

お寺に頼る「親なきあと」

「あ~すっきりした!」「またね!」

 親御さんたちが日ごろの悩みやただの愚痴を思いっきり吐き出して、あっという間に2時間半が過ぎます。大阪・願生寺で行われる「親あるあいだの語らいカフェ」の光景です。終わった後は、皆さんどこか心の重荷を下ろしたような、ほっとした表情になります。

子どもを小中学校の支援学級や特別支援学校に通わせている親御さんもいれば、成人した障害のある子がいる親御さん、不登校やひきこもりの子がいる親御さんもいます。親御さんではなく、お子さん本人がやって来ることもあります。

子どもの年齢も障害の種類や程度も、みんなバラバラ。それでも、いいえ、だからこそお互いの心配事に耳を傾けながら、思う存分話せるのです。

私が運営に携わっている一般財団法人 お寺と教会の親なきあと相談室は、このような「親あるあいだの語らいカフェ」を、全国のお寺で開いてもらっています。お寺によって開くペースややり方は少しずつ異なりますが、共通しているのは「お寺ならではの落ち着いた雰囲気」で「気兼ねなく話せる」ことです。

(Copyright)文化時報社

 

「親なきあと」で置き去りにされがちなこと

親なきあとについて考えるとき、皆さんはどうしていますか? 制度を調べて、入居施設を決めて、成年後見人を付けて…と、子どものためにいろいろなことを研究されていると思います。

これらはもちろん全て大切なことです。けれども、安心できる入所施設が決まっても、成年後見人をつけても、それでもいくらでも心配がわいてくるのが親心です。

親が子どもの面倒をみられなくなったあと、子どもが年を重ねたり病気になったりしても、ちゃんと大切にお世話をしてもらえるでしょうか。楽しくやれるでしょうか。職員さんはやさしいでしょうか。そしていよいよ亡くなるときは、誰に看取られて、弔ってもらえるのでしょうか。(今が大変で、弔いのような先のことまで考えが及んでいる方は少ないですが)

置き去りにされがちなこれらの心配事ですが、親としては、子どもより先に自分がこの世にいなくなるのだから、あとは野となれ山となれ―とは……思えませんよね。一人で抱えておくにはこの心配は重すぎます。一体どうしたら。

(Copyright)文化時報社

お寺の役割

親ならではのそんな心配事をすべて解決できるような現行制度は残念ながらありませんし、これからも難しいでしょう。でも、一旦受け止めてくれるようなそんな第三者として、「いのち」に関する専門家であるお坊さまがなかなか適任なのです。それにお葬式やお墓、供養、はまさにお寺の得意分野でもあります。

お寺には困った人の話を聞く、救いの手を差し伸べる、という本来の役割がありますし、地域住民のため尽力したいと思われているお坊さまが全国各地にいらっしゃいます。また、そのようなお坊さまやお寺にわが子の存在を知ってもらうことそれ自体が親御さんの安心につながると考えています。

ご関心いただけましたら、お近くの「親あるあいだの語らいカフェ」に、お気軽に足をお運びいただけましたら幸いです。

※「親あるあいだの語らいカフェ」の開催情報や報告は、一般財団法人 お寺と教会の親なきあと相談室のホームページでご確認いただけます。

※写真は文化時報社様より提供いただきました。

執筆者プロフィール

藤井奈緒

一般社団法人「親なきあと」相談室 関西ネットワーク 代表理事
一般財団法人お寺と教会の親なきあと相談室 理事 兼 アドバイザー

大阪府八尾市在住。八尾市教育委員会 教育委員(2019年12月~)
重度の知的障がい者である長女(21才)と、次女(15才)の母。
『親なきあと』次女一人に、長女の世話を引き受けさせることになるかもしれない状況に危機感を抱き、法的な備えについての勉強を始める。 その後、自分と同じように『親なきあと』を心配している障がい者家族が大勢いる事を知り、2019年に【一般社団法人 親なきあと相談室 関西ネットワーク】を設立。個別相談やセミナーを通して、障がい者の家族が安心して、笑顔で暮らしていくための情報提供を行う。また、2021年には【一般財団法人 お寺と教会の親なきあと相談室】の設立に参加し、一生涯寄り添い続けてくれる存在としての宗教者と、不安を抱える方々への架け橋となる活動を全国展開している。
その他、一般的な『終活』をテーマとした講演活動も行っている。

~講演実績~
・支援学校PTA勉強会 ・障害者団体保護者向け勉強会 ・障害者施設職員研修 ・社会福祉協議会主催講演会 ・東京、関西、京都、その他相続診断士会勉強会  ・浄土真宗本願寺派(京都)・真宗大谷派(京都)・真宗佛光派(京都)・金光教大阪センター他・一般社団法人コスモス成年後見サポートセンター大阪府支部・自治体主催市民講座・豊中市主催、人権啓発講演会講師 ・大阪府教育センター教員研修講師 その他多数

~メディア実績~【テレビ・新聞・ラジオ・雑誌】
・NHK総合『ニュースほっとかんさい』特集 ・産経新聞・読売新聞・朝日新聞・毎日新聞・京都新聞・文化時報 ・終活読本ソナエ・シニアガイド終活探訪記・毎日新聞医療プレミアム ・FMラジオ大阪、各地の地域FM、KBS京都ラジオ他

この執筆者の記事一覧

関連記事

おすすめの記事

  • 子どもに伝わる視覚支援(準備編)

    発達障害やグレーゾーンの子どもへの指示は、絵カードや視覚的に指示を出すことが有効だと聞いたことはありませんか? でも、いざ絵カードを作っても子どもは見向きもしない、ということも少なくありません。そんな …

  • 電車の緊急停止ボタン、非常ベルを押してしまう子

    自閉症と知的障害のある息子ですが、思い返せば幼い頃、ボタンと言うボタン、その中で非常ベルボタンを押そうとしていた時期がありました。 それから、火事でもないのに消火器の安全栓を引き抜こうとしていた時期も …

  • ADHDがある人のSNSとの付き合い方

    少し前になりますが、某タレントがSNSで他の芸能人を中傷するような投稿をして活動休止に追い込まれてニュースになりました。このタレントに発達障害があるかどうか、私は知る立場にありませんが、このニュースか …

  • 子どもの障害、夫婦の温度差

    シングルマザーの私が相談相手として適切かどうか疑問ではありますが「夫と発達障害児の子育てについて意見が合わず、喧嘩が絶えない」というご相談をよく受けます。 さて、ちょっと古いたとえかもしれませんが、結 …