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本人に障害をどう伝える?いつ伝える?

子どもが発達障害と診断されたり、グレーゾーンだと言われた経験があると、「障害告知」という言葉が頭に浮かびます。

わたし自身も、保育園に息子を入園させる際、誰に、どこまで、どんな風に、伝えたらいいのか分からず、迷ったことを覚えています。子どもの年齢があがってくると、本人への告知も気になりますよね。

ネットで検索が日常になり、子どもの方から「ぼくって、発達障害なの?」「わたしって、ADHDなの?」と聞かれるケースも耳にします。「いつかは……」と思っていても、急に子どもから切り出されると、慌てて誤魔化してしまうこともあるかもしれません。

告知をしたからといって周りから理解やサポートが得られる、本人がラクになるという保障はどこにもないので、慎重に考えていかなくてはならないテーマです。

周りに伝える際に気をつけること

家族や周りへ伝える際に、気をつけてほしいことがあります。それは、診断名だけを伝えること。これは、オススメできません。

診断名が同じでも、困っていることや必要なサポートは子どもひとりひとり違うのに、診断名だけを相手に伝えると、誤った情報やうわさ、マイナスなイメージのみ与えてしまう可能性があるからです。

発達障害やグレーゾーンのお子さんがいらっしゃる親御さんは、子育てを通して「あれ?」と思った時や診断がついた時から、本やネットで勉強して一通りの知識は持っていることが多いと思います。でも、いわゆる定型発達と言われるお子さんの親御さんは、診断名だけ言われてもなじみがなく、どう反応したらいいのか困ってしまうかもしれません。

周りへ伝えるときのコツ

例えば、わたしの子どもは聴覚過敏があり、教室のにぎやかな空間で長時間過ごすと、イライラしたり、固まって泣いたりすることがありました。それだけでなく、泣いている時に声をかけられたりすると、さらにパニックになってしまいます。先生やお友達が心配して声をかけてくれたことだったとしても、本人にとってはパニックへのスイッチになってしまうのです。

これらの子どもの特性や行動を踏まえて、小学校入学後のはじめての保護者懇談会では、次のように伝えました。

「うちの子はにぎやかなところが苦手で、教室から出たくなったり、泣いてしまうことがあります。でも、そっとしておいてもらえると、自分で落ち着いてまた席につくことができます。ご迷惑をおかけすることがあるかと思いますが、見守っていただけると幸いです。」

私が思う周りへ伝えるコツは、

  1. 集団生活(その環境)で起こる可能性のある困った行動
  2. 「こうすればうまくいく」という対処法やサポート(周りの行動や声かけなど)

この2つを一緒に伝えることです。そのためにも、自宅で実践している声かけや対処法をまとめておきましょう。

本人に伝えるとき、どうする?

個人差はありますが、「発達障害の子どもは、小学2年生頃から周りとの違いに気付く」と言われています。

本人は頑張っているつもりでも、わからない・できない。ふざけているつもりはなくても、気が散ってしまう・忘れてしまう。周りのお友達と比べて怒られたり注意されたりしてしまう。どうして僕だけ?わたしなんか…という自己肯定感の低下も関係しているのかもしれません。

また、携帯電話やタブレットでインターネット検索が身近になった現代では、たくさんの情報が得られるようになりました。

わたしの子どもも、タブレットと一緒に生きているような子。好きなユーチューバーがいて、時々「ママも面白いから一緒に観よう!」と言われるのですが、ちらっと見える他のチャンネルのタイトルに「発達障害」や「ADHD」という文字が見えると、内容どころではなくなってしまいます。

結論として……中学3年生ですが、わが家はまだ本人に障害を伝えていません。その理由をお話ししますね。

わが家の場合

わたしの子どもは、3歳の時に自閉スペクトラム症と診断されました。些細なことで癇癪を起こし、感覚過敏も多く、いわゆる「育てにくい」子どもでした。診断がついてからは、定期的に療育センターに通いながら主治医や心理士さんと面談をしていました。

息子が小学2年生になった頃、いつものように療育センターに向かっていると、突然「どうして僕は、ここにこないといけないの?」と言われてしまいました。わたしは焦り、なんて答えていいか分からず、冷たく誤魔化してしまいました。

あぁ、いよいよ告知をしなきゃいけない時が来たのか……と不安になりましたが、主治医からは次のように教えていただきました。

  • 告知の年齢:小学4,5年生で約10%。中学2,3年生で約20%。
  • 告知の条件:自己理解や秘密保持能力が備わっていること

タイミングや個人差はあると思いますが、わが家は(中学3年生)もう少し先だと考えています。

本人へ伝えるときに気をつけることと事前準備

本人への告知の場合、診断名や苦手なことを周りに伝えたときと全く同じように伝えることはオススメできません。

本人に苦手なことを伝えることで意識して努力をしてくれるのではないかと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、発達障害やグレーゾーンのお子さんは努力してもどうしても苦手なこと、できないことがあります。また、本人なりに努力をしている場合もあり、そのような状況で診断名や苦手なことだけを伝えることは、自己肯定感や信頼関係の低下につながってしまいます。

中には、診断名を聞いて「自分の頑張りが足りないせいではなかったんだ」と、ほっとするお子さんもいるかもしれませんが、どちらにせよ、子どもにとって少しでも前向きに捉えらえるように、伝えたいですよね

そのためには、日頃の関わりや準備が必要です。例えば、

  • 「こういうところがあるけれど(短所)、こんな風にするとできるよね(対処)」
  • 「こういうところが苦手だけれど、こんな風に言えば助けてもらえるよ(ヘルプサイン)」
  • 「助けてもらったら、ありがとうって伝えようね」

普段からこのような声かけをしていくことで、子どもは自分の苦手なこととその対処法や周りに頼るスキルを身に付けていくことができます。自分の苦手なことや対処法を知ることは、自己理解につながります。

発達特性があってもなくても、誰にでも苦手なことはありますし、ひとりで頑張って心をすり減らすよりも、助けてもらって「ありがとう」と言えるコミュニケーションを育てるということも、生きていく中でとても大切なことです。

いつその日が来てもいいように

わたし自身、子どもへの「障害告知」のゴールがどうなるのか?まだ分かりません。もしかしたら、今日にでも「ぼくって発達障害なの?」と聞かれるかもしれません。

だから、いつその日が来ても良いように、子どもと信頼関係を築くことや生きやすくなるためのサポートを一緒に考えることが、障害告知への一歩なのかなと思っています。

 

執筆者プロフィール

浜田悦子(はまだ えつこ)

発達障害・グレーゾーン専門
子どもとママのための家庭療育アドバイザー

繰り返す問題行動に怒られてばかりの子どもと 孤独な子育てに苦しんでいるママに寄り添い、 子どもの自己肯定感とママの子育ての自信を取り戻し 笑顔に導く家庭療育アドバイザー。
自身の子どもが発達障害と診断されたことをきっかけに、発達支援センターの指導員へ。以来、約2,000人以上の親子に関わる。
大学、発達支援センター、放課後等デイサービスでの講演・研修多数。

【著書】
『発達障害&グレーゾーンの子どもを「急かさず」「怒らず」成長を引き出す言葉かけ 』浜田悦子 (著), 汐見稔幸 (監修) 実務教育出版

【執筆・監修】
ユーキャン 子ども発達障がい支援アドバイザー講座
ユーキャン 思春期発達障がい支援アドバイザー講座

【メディア掲載】
毎日新聞、中日新聞、朝日新聞、ひよこクラブ、朝日新聞 WEEKLY AERAなど

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