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コントロールできない!チック症はつらいよ

「チック症」は「不随意運動」とも呼ばれる、自分の意思と関係なく体が動いてしまう症状です。私の息子には発達障害とチック症の両方があります。

就学前から小学校低学年頃に発症し、青年期には軽くなるといわれるチックですが、息子は15歳の頃から、とても重いチックに悩まされてきました。その症状は、チックの動きに操られて食事もできなくなるほど。21歳の現在は気にならない程度に軽くなりました。

チックの現れ方は人それぞれ。今回は息子のたどった経過をひとつのケースとして紹介します。

これもチック? 謎の動き

息子は小さいころから、目をパチパチ瞬きしたり首をかたむけたりする、かすかなチックがありました。私はそれがかわいくて気に入っていたので、当時は「これ、チックだな」と知りつつも全く気にしていませんでした。

特別支援学校高等部に入って2カ月ほど経った頃、息子が突然、「謎の動き」をするようになりました。言葉での説明が難しいのですが、パチンコ台のハンドルを回すように手首を回転させながら、左右の腕を私に向かって突き出してくる──こんな動きを、何度も何度も繰り返すのです。

初めてこの動作を見たのは、息子とふたりでドライブしている車の中でした。助手席に座る息子が、運転している私に向かって、手首をぐりぐりひねりながら手を出したり引いたりしています。はじめはふざけているのかと思いましたが、息子の表情に焦りのようなものが見え、やらないとムズムズして耐えられないといった感じを受けたことから「もしかして、チック?」と思い至りました。

かわいそうで見ていられない

この頃から、息子の精神状態は急激に悪化していきました。不機嫌になり泣き叫んだり、他害や自傷行為が増えて、奇声をあげて暴れるパニックを起こすようにもなりました。そして⁡これ以降、今までに見たことのない、いろんな動作のチックが現れるようになりました。

  • 人差し指で空中に文字を書くような動き
  • 首を振ったり、肩をくねくね動かす
  • ⁡「ふんっ!ふんっ!」と言いながら腕を上げて振り下ろしたり、振り回したりする
  • 瞬間的に電流を流したように、上体をバタつかせる
  • 両腕を上げ「あーーー!」と絶叫しながら、雷に打たれ続けているように全身をけいれんさせる

 (脳波の検査もしましたが、異常はありませんでした)

どれも自分でコントロールができず、自動的に体が動いてしまうか、やらないとムズムズする、といった様子は共通しています。

食事のときに起きると、体が操られてご飯も食べられません。顔が赤くなり、熱も出るほどの運動量です。この時の息子は人が変わったように目つきが鋭くなり、抗うことのできない力との闘いに苦しそう。かわいそうで見ていられなくなります。

このようになるきっかけは、実はいくら考えても分かりません。

学校の先生方も「ストレスはとことん排除しているのに、チックやパニックが突然はじまる」と不思議がっていました。はじめによく聞かれた「何かきっかけや前兆はあるのですか」という質問は、「そんなものない」と学校でも認識したのか聞かれなくなりました。

ただ、外から見たきっかけは分からなくても、「つらいことを思い出した」「自分がダメな人だと感じた」など、本人にとってのストレスがあり、それがきっかけになることは考えられると思っています。

症状が出たら

一般的には、チックが軽いうちは「叱らない」「そっとしておく」のが良いと聞きます。

うちの場合も、息子が小さいうちは病院で「チックに効く薬はない」「そっとしておけば良くなる」と言われてきて、その通り気にせず過ごしてきましたが、ここまでひどくなるとそうもいきません。

症状が重くなってから私がしたことは、まずはとにかく、ストレスをかけないようにすることでした。家では好きなパソコンをやりたいだけやらせ(たいていは地図かドラレコ動画を見てます)、小学生時代から始めたお手伝いも強制しません。ひたすらのんびり過ごさせます。

学校でも、みんなと同じペースの活動ではなく独自のゆるい活動をさせたり、チックが始まったときも人目を気にして心の負担にならないよう、ひとりになれる別室で過ごさせるなどの配慮をしてくださいました。

家でチックが全身運動にまで発展したときは、家族もつらいです。息子からすると、見られたくない姿をさらしているので、軽いうちなら気にしていない素振りをする私も、息子のバタバタする姿に動揺し「大丈夫? 大丈夫? つらいね…つらいね…」などと声を掛けてオロオロするしかありませんでした。

病院へは動画で伝える

息子がパニックに陥りチックが悪化してくると、かわいそうだとは思いつつ、私はスマホで息子の様子を動画に撮り始めます。なぜなら、病院で息子の状態を正確に伝えるにはこれがいちばんだからです。受診の度に動画を見ていただき、息子がどんなにつらいかを訴えました。

息子の症状を見たお医者様の見解は

「普通のチックとは違う気もする。チックかもしれないし、厳密には違うかもしれない。」

……と、なんともモヤッとするお言葉をいただきました (o´Д`)=з

そんな訳で、このコラムでこれまで散々「チック、チック」と言ってきましたが、この場では「私と学校の先生から見てチックとしか説明がつかないし、チックだとした時に、いちばんしっくりくる」ので「チック」と表現することを今さらですがご了承ください m(_ _)m

頓服薬の力を借りる

チックの症状が強く出たときには、たいていはパニックを起こしているので、学校でも家でも、病院で処方された「リスペリドン」という頓服薬(1ml)を飲ませます。30分ほどで落ち着いてきます。

薬を飲ませる時に気をつけていたのは「来た!」と思ったら早めに飲ませることです。理由のひとつは、悪化すると薬が効くまでに時間がかかるか効きにくくなり、結果、薬を追加することがあったため。もうひとつは、私の肌感覚ですが「ひどくさせないことが大切」と感じるからです。チックやパニックがひどくなると本人がつらくなりますし、ひどさの限界を更新すると、次にもその領域まで達しやすくなる気がしています。

薬はできれば与えたくないですが、症状が落ち着いてホッとした息子の顔を見ると、まずは楽にさせてあげることが最優先かなと感じます。

チック症にご理解を!

特別支援学校高等部を卒業した息子は、就労継続支援B型事業所に籍を置き、調子の良いときだけ通所する生活を始めました。通所が毎日でなくてもかまわないし、慣れた作業を自分のペースで進められることが安心なのか、一時よりはだいぶ、チックもパニックも少なくなりました。

それでも今も、買い物などの外出中に手や肩、首を急に動かすチックが出ます。数年経つうちに消えたチックもあれば、新たに出現したチックもあって、入れ替わるのも不思議だなと思っています。

成人してからやり出した「中指を人に向けて立てる」(いわゆる○ックユーのポーズ)チックには驚きました ∑(O_O;) 私に向かってしかやりませんが(しかもかっこつけた感じで)、暴れない代わりにギョッとさせてくれます。 汚言など「やってはいけないことをしたくなるチック」というものがあるらしく、そのひとつかもしれません。

自分では止められない、なんとか止められる瞬間があったとしても、とてつもないエネルギーを要するチック。治療法が確立すること、理解が広がることを願うばかりです。

どうか町で「謎の動き」をしている人を見かけたら「チック症で困っているのかもしれない」と思って、温かく見守っていただけるとうれしいです。

 


<お知らせ>細川さんのライフワークの一つが米作り。14年連続 「水質日本一」、吾妻連峰を水源とする荒川の恵みのもと、ご夫婦で手間暇かけた丁寧な稲作に取り組まれています。そして今年も美味しいお米を無事収穫できたそう。今年もふるさと納税サイトでの受付が始まったということで、ぜひ下記をのぞいてみてください。写真が素敵です♪(編集担当より)

ふるさとチョイス 【令和6年産 新米先行受付】たきちゃん農場のコシヒカリ 精米 10kg

※クリックすると外部サイトへ飛びます。

 

 

執筆者プロフィール

細川 有美子(ほそかわ ゆみこ)

1968年生まれ、福島県在住。
バックパッカーとして海外旅行中に出会ったエジプト人と2000年に結婚。現地で子供2人を出産する。2003年子供と帰国したのち、息子の発達障害が判明。夫とは2005年に離婚。
これまでに自閉症(中等度発達遅滞)・ADHD・精神障害・難病(クローン病)の診断を受けた息子の子育てと現在を、Instagramで発信。
2014年より取材・執筆活動を開始し、現在は事業所でのパート勤務、再婚の夫とふたりで米づくりにも奮闘している。
◇たきちゃん農場 https://www.takirice.com/
◇Instagram https://www.instagram.com/yumiko_days

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