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真面目か!

知的障害を伴う自閉症のある息子は特別支援学校高等部卒業後、就職する前、就労移行支援事業所に3年間通いました。その頃の話です。

ある日、その就労移行支援事業所とは別に通っていた通所施設の中に、帽子をかぶったまま入ったところ、支援員から「マナー違反」「外で帽子は脱ぎましょう」と指導を受けたようです。

さて、別の日、次は就労移行支援事業所へ出かけました。土砂降りの雨だったので長靴を履いて出かけましたが、屋内で長靴を履いているわけにもいかないので、私は別の靴も持たせ「部屋に入ったら履き替えてね」と伝えました。すると「マナー違反!マナー違反!外で履き替える!コンビニの前で履き替える!」と言い出したのです。

いい風に考えると帽子で以前注意されたことを長靴に「応用できた」のかもしれませんが、履き替えるといった場所は玄関ではなく、全くの外。ビルの一階の道路(そこにはコンビニがある)で履き替えるというのです。土砂降りの雨の中、道路で長靴を履き替えている息子を見て、道行く見知らぬ人々はびっくりするでしょう。

だから「外で長靴を履き替えるとおかしいよ。部屋に入って履き替えなさい」と注意しました。するとパニックを起こし、自傷行為をしました。

ふしぎな優先順位

また別の話です。

就労移行支援事業所に通うため、息子は家をいつも9時に出ていました。ある日のこと、いったん家を出てから20分後(9時20分)に戻ってきました。事業所には電車で通っています。家を出てから7分後には電車に乗っているのでこの時刻に戻ってきたということは

いったん電車を降りて戻ってきたのです。何かと思えば「テッシュペーパーを忘れた!」というのです。どうでもよい忘れ物でも取りに帰ってくる融通のきかなさがつくづく「特性」だなあと思いました。

事業所では欠席の連絡を9時30分から10時の間に本人が入れることになっていました。でも、どうでもよい忘れ物(ティッシュペーパー)を9時20分に家に取りに戻ったため、そのまま急いで駅に向かうと、9時30分は電車の中にいる、イコール電話ができない状況になります。息子の選択は……?

更に遅刻して9時30分まで家にいて、自分で電話していました。なるべく早くつくことよりも、遅刻連絡の時間を守ることを優先していたんですね。優先順位が独特です。

確かに息子のロジックもわかりますが、普通はこうなった場合は9時30分前に電話を入れるとか、10時過ぎてしまっても事業所の最寄り駅についてから電話するような気がします。でも息子は違いました。(まあ、電車内で電話をしてはならないルールは優先してほしかったので、そのルールを守ったという点で上出来ではあるのですが)

汎化、応用が不得手という息子の特性に合わせ、この場合はこう×100…と、一つひとつの事例で細かく伝えていくほかないのか、と感じた出来事でした。

最近の様子

ちなみに、最近は体験を重ねてきたせいか、少しずつ応用できるようになりました。例えば、以前はおならをするたびに、たとえそれが臭わない音のしない小さなおならでも、大きな声で「失礼しました!おならしました!」と周りに謝っていたのですが、最近は大きな音が出た場合のみ、「失礼しました」と言います。(家でも私にこんなときは丁寧語を使います。マナーを遵守しているのでしょう)

そしてもう、ティッシュペーパーを忘れたからと言って、電車を降りて取りに戻ることもありません。

最後、面白エピソードみたいになってしまいましたが、何か伝わるものがありましたら幸いです。

 

執筆者プロフィール

立石美津子(たていし みつこ)

著述家
20年間学習塾を経営、現在は著者・講演家として活動。
自閉症スペクトラム支援士

『一人でできる子が育つテキトーかあさんのすすめ』
『はずれ先生にあたったとき読む本』
『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』
『動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな』
など著書多数

日本医学ジャーナリスト協会賞大賞受賞作『発達障害に生まれて(ノンフィクション)』のモデル
Voicy  https://voicy.jp/channel/4272
オフィシャルサイトURL https://tateishi-mitsuko.com/
テキトー母さんのすすめ(アメブロ) https://ameblo.jp/tateishi-mitsuko/

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