他人からのリスク

発達障がいや知的障がいのある方が、かんしゃくやパニック、または注意不足によって、他人にケガをさせてしまったり、他人の物を壊してしまったり、と他人への迷惑行為を及ぼしてしまうこと、いわば「他人へのリスク」に対して個人賠償責任保険等で備えている方もいるでしょう。しかし、「他人からのリスク」への備えについてはあまり目を向けていない方も多いのではないでしょうか。「他人からのリスク」とは何か、そしてその備えとしてどんなことを考えておきたいかを整理してみましょう。

他人からのリスクとはなにか

「他人からのリスク」とは、いわば人権侵害を受けるリスクです。

例えば、障がい者虐待が挙げられます。インターネットで「障害者 虐待」のキーワードニュース検索をしてみると、障がい者支援施設における男性職員による利用者女性への性的虐待のニュースや、送迎用の車内に放置された男性利用者が熱中症とみられる症状で死亡したといったようなニュースが目に飛び込んできます。障害者虐待防止法が施行されているものの、上記のような人権侵害につながるニュースが後を絶ちません。なお発達障がいや知的障がいがある子供の場合は、いじめというカタチで他人からのリスクを受ける可能性もあります。

また、身体的な虐待以外に、詐欺などの経済的な虐待を受ける可能性も考えられます。知的障害がある男性が、飲食店等を連れまわされて、代金の支払いとして1,000万円を超えるお金をATMから引き出すようにいわれ従ってしまったという事例もあります。また、判断能力が低いことにつけこんで、マルチ商法等への誘引や高額商品の売込をされることもあるでしょう。

身体的な虐待、経済的な虐待いずれにしても、「他人からのリスク」が発覚するケースは、氷山の一角かもしれません。判断能力のレベルによっては、受けた行為が虐待かどうか判断できないこともあるでしょうし、好ましくない行為だと分かっていたとしてもそれを訴えるための勇気や相談相手、そして資金がなければ、表に出てこないこともあり得るお話です。

「他人からのリスク」への備えとは

「他人からのリスク」に対して、どのような備えを考えておけばよいのでしょうか。まず、虐待を受けてしまった場合に訴えを起こすことを想定して、弁護士への相談費用等の金銭的な備えがあると、資金的な心配をすることなく相談することができます。また、実際に相談する際に備えて、発達障がいや知的障がいに理解があり、親身になって相談にのったり、弁護を引き受けてくれたりする弁護士を見つけておくということも、重要なことです。
そのような費用の準備や弁護士との関係確保というハード面の備えに加えて、ソフト面での備えとして発達障がいや知的障がいがある方が「他人からのリスク」に晒された際に気軽に相談できる環境を整えておくということも大切なことです。

発達障がいや知的障がいがある方が、心配事があったときに、親御さん以外にも安心して相談をすることができる人がいると心強いでしょう。ただ、言うまでもありませんが、発達障がいや知的障がいがある方は、本人から話を切り出すことが難しいケースもあります。普段の様子との違和感を周りが感じ取り、心配事の有無等をヒアリングするという、支援者等の目配りや配慮も「他人からのリスク」への備えとして考えておきたいものです。

他人へ迷惑をかけないための「他人へのリスク」に注目する中で、見落としがちな「他人からのリスク」。判断能力にハンディのある発達障がいや知的障がいがある方の人権擁護のために大切な視点です。是非この機会に、「他人からのリスク」への備えについて考えてみてください。

執筆者プロフィール

キムラミキ

鳥取県立米子東高等学校卒業後、日本社会事業大学 社会福祉学部にて福祉行政を学ぶ。大学在学中にAFP、社会福祉士を取得。大学卒業後、アメリカンファミリー保険会社での保険営業を経て、株式会社アゼル(マンションデベロッパー)にてマンション営業、マンション営業企画に携わった。その後、独立系FP会社での業務委託・スタッフ経験を経て、2008年8月より独立し、現在、株式会社ラフデッサン代表取締役を務める。

定期刊行誌、新聞社webコラム等の執筆業務を中心に、セミナー講師、個人向けFP相談を受ける。

キムラミキ
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