大人の発達障がい

大人の発達障がい

発達障がいの早期発見や支援について定めた法律である、発達障害者支援法が施行されたのは2005年のこと。その頃から、少しずつ発達障がいへの認知は広がってきました。しかし、それ以前の時期においては、そもそも認知が広がっていないわけですから、特に知的障がいを伴っていない発達障がいの場合、周りに気づかれなくてもおかしくはありません。その結果、発達障がいについて未診断のまま大人となり、困り感を抱えながらも相談できぬまま生活を送っている可能性は否めないのです。

発達障がいのある方が大人になってどんなことで困り感を抱えているか

大人になってから発達障がいであると診断を受ける場合、知的障がいを伴わないことが多いので、診断名はアスペルガー症候群やADHDに該当する方が多いのではないでしょうか。知的障がいを伴わない発達障がいのある方が大人になった場合、どんなことで困り感を抱えているのでしょう。以下に、一例を挙げてみましょう。

例えば、贈答品を差し出されたときに「つまらないものですが…」と添えられた枕詞を、言葉通りに「つまらない贈答品」と受け取ってしまうといったように、物事を表面的に受け取ったり、人が傷つきそうなこともストレートに口にだしてしまったり、ということもあるでしょう。会社や上司の欠点を目の前で指摘して上司から叱責されたものの、自分の発言の何が悪いか分からず首を捻り、さらに上司を激高させるなんてこともあるかもしれません。

また、具体的に指示をすれば指示通りに真面目に仕事をこなすものの、見通しを立てるのが苦手な特性のために、自分から仕事の段取りをつけることが難しく、周りから見ると指示待ち人間に見えている可能性もあります。

学校にいるときは年齢がさほど変わらない集団の中で過ごせばよいですし、好きなことに興じていても「変わっている人」で済まされるかもしれません。しかし、職場となると様々な年齢層、上下関係等々、複雑な人間関係の中で仕事をこなしていく必要があります。そんな中、発達障がいであることが分からないまま、先述のような状況が度重なれば、毎日のように叱責されたり、職場での人間関係が悪化したりということも推測されます。その結果、本人がパニックやかんしゃくを起こしたり、ストレスを感じて職場を離れざるを得なかったり、という事態も起こりうる話です。実際に、多数転職を繰り返したことがきっかけで、発達障がいであると診断されたというケースも少なくありません。

大人になってからの診断は必要か?

大人になってからでも診断を受けることで、障害者手帳、障害年金を受ける権利を有するなどメリットがあります。大人になってから発達障がいの診断を受けた人の中には、「今までのことは自分の努力不足によるものではなかったと分かってホッとした」という声を漏らす方もいます。とはいえ、自分に障がいがあるということを受け止めるためには、時間も必要です。もちろん、診断を受けても障がいがあることを公表するか否かも自分の自由です。マイナスにとらえず、特性を理解することで自分にあった職種や仕事のやり方を考えていきたいものです。

ただ、障がいの公表の有無に関わらず自分を守るためにも、上司からの叱責や指示へのストレス等から、万一パニックやかんしゃくを起こして会社の備品等を壊したり、人にケガを負わせてしまったり、という損害賠償責任への備えを考えておきたいものです。また、職場での必要以上の暴言または拒絶的な対応により心理的外傷を受けた場合に、相談できる人や場所を予めもっておくということも大切なことであると思います。

努力しているのに職場でのミスが多くて怒られるなど、思い当たることがある方は自分ばかりを責めるのではなく、関係機関へ相談してみてはいかがでしょうか。

執筆者プロフィール

キムラミキ

鳥取県立米子東高等学校卒業後、日本社会事業大学 社会福祉学部にて福祉行政を学ぶ。大学在学中にAFP、社会福祉士を取得。大学卒業後、アメリカンファミリー保険会社での保険営業を経て、株式会社アゼル(マンションデベロッパー)にてマンション営業、マンション営業企画に携わった。その後、独立系FP会社での業務委託・スタッフ経験を経て、2008年8月より独立し、現在、株式会社ラフデッサン代表取締役を務める。

定期刊行誌、新聞社webコラム等の執筆業務を中心に、セミナー講師、個人向けFP相談を受ける。

キムラミキ
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