障害者にとって「働く」とは

障害者ドットコム株式会社の川田と申します。学齢期から就労の準備について、全6回にわたってお伝えしてまいります。第1回目の今回は障害をもつ方にとっての働くことの意味について考えたいと思います。

人はなぜ働くのでしょうか?全従業員81名中60名が知的障害のある社員である日本理化学工業(株)の大山会長は、禅寺のお坊さんの教えから学び、「人間の究極の幸せは、愛されること、褒められること、人の役に立つこと、人に必要とされること。福祉施設で大事に面倒をみてもらうことが幸せではなく、働いて役に立つ会社こそが人間を幸せにする。」と語っています。仕事をすることでお金を稼ぐことも大切ですが、人の役に立つことこそが本当の幸せであり、働くことの意味であると思います。

「働いて、自立して生活できるようになってほしい。」何よりも親の願いです。働くためには親のサポートが何よりも重要になってきますが、知的障害・発達障害などを持つお子様の親御さんにとって、「親亡き後」の生活は大きな心配ごとの1つです。「子どもより1日、1時間でも長く生きたい。」という気持ちの方が多いのではないでしょうか。

筆者は、阪神・淡路大震災で被災した障害者施設で1年間支援活動をしていました。そこでは施設の障害をもつ人たちが先頭に立って炊き出しを行い、被災した人たちに振る舞いました。障害をもつ人が福祉のお世話になる「与えられる」側ではなく、「与える」側に立って活動を行っていくことを、私は誇りに思っていて、この仕事における原点になっています。

しかし、いまだに障害者は働く能力がない存在として捉えられている人も多くいます。これまでに筆者が働いていた精神障害をもつ親の会が運営する作業所では紙袋の加工の作業をしていましたが、紙袋1枚完成させて1円とか2円の世界でした。業者でも、障害をもつ方はコストを下げるための道具として考えているところもあります。障害者は格安労働者ではありません。障害があっても価値がある存在として働くことができる社会にしていくことが求められています。

社会を変えていくことも大切ですが、もちろん障害者自身も変わっていくことも必要です。障害や病気をもつ人が社会で働いていくためには、何が必要でしょうか?障害を持つ人は、学齢期のうちから就労の準備をすることが重要です。早い時期から準備をすることで将来の可能性が広がります。とはいっても、「何をどう準備したらよいかとわからない」「まだ先のことなので、今のところは様子をみよう」という方がほとんどではないでしょうか。

次回以降のコラムでは、就労に向けて具体的にどのような準備していったらよいかを皆さんと一緒に考えていきたいと思います。筆者が関わってきた方には、働くことで病気の症状が改善した方や障害とうまく付き合うことができるようになった方がたくさんいらっしゃいます。体験談を交えながら、働く上で必要な社会のルールやマナー、コミュニケーション能力を身につけていくためのヒントについてお伝えしていきます。

働くことの大切さについて取り上げていきますが、もちろん働くことが目標のすべてではありません。働きたくても、重度の障害のために働くことができない方もいらっしゃいますし、働かないという選択も1つだと思います。大切なのは本人がどのような生活を望んでいるのか、それに向けてどうしていくかです。親が元気なうちに子どもと共に考え、行動していくことが大切です。

次回は、相談支援機関、当事者や親の会など、困っている時に頼りになる地域の窓口や団体についてお話したいと思います。

執筆者プロフィール

川田 祐一(かわだ ゆういち)

石川県金沢市生まれ。
同志社大学卒業。阪神淡路大震災直後、知的障害者施設で障害者と一緒に炊き出しや仮設住宅訪問など支援に取り組む。
宇治市社会福祉協議会を経て、兵庫・宝塚のNPOで障害者の就労支援に携わり、その後、起業し、10年で事業所を阪神地域で12か所まで拡大した。
現在はインターネットメディア「障害者ドットコム」の代表、大阪医専の講師を務める。

川田 祐一
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