オウム返しが増えるだけ?言葉を増やすには

自閉症の子は言葉が遅れることがあります。親が懸命に単語教えても、オウム返しが増えるだけ。

例えば「葉っぱ」という言葉を教えたいとき、葉っぱを見せて
母「これは葉っぱよ、葉っぱ」

これは葉っぱよ

©今井久恵

子「これは葉っぱよ、葉っぱ」

 

母「そうじゃなくて葉っぱ」

そうじゃなくて葉っぱ

子「そうじゃなくて葉っぱ」

と親の言葉をオウムのように繰り返すだけになってしまうこともあります。

また別の例
母「お名前はなんですか」
子「お名前はなんですか」

 

母「お名前はなんですか」
子「お名前はなんですか。立石勇太です」
(相手の質問まで言ってしまう)

 

母「名前を教えてください」
子「・・・」
(別の言い方で質問されると固まってしまう)

 

タクシーに乗ったとき運転手が「僕のお名前は」と息子に聞きました。息子は自分の名前でなく「安藤太郎」と運転手のネームプレートを読み上げました。

 

それから…
電車の型番、国の名称、リンゴの銘柄を「王林、ジョナゴール、シナノスイート、世界一、富士…」と唱えていても「ママ、電車に乗ってお出かけしたい」とか「お母さん、このリンゴ美味しそうだね。買って~買って~」の会話はなかなかできません。

■初めての言葉

5歳の時、うどん屋で私と息子はうどんを食べていました。一本、うどんの切れ端が残っている器を、店員が下げようとしたその時「まだ、食べる!」と叫びました。店員は慌てて器を戻しました。

全く喋らなかったのに自分の意思をはっきり示す言葉、しかも二語文!初めての言葉は「ママ」「お母さん」ではなかったですが、私は嬉しくて舞い上がりました。

さて、なぜ、この言葉が出たのか考えてみました。それは「うどんを最後の1本まで食べたい、器を下げようとしている店員に何がなんでも伝えたい」という強い動機があったからだと思います。

この経験をきっかけに「自分の要求を叶えるには、言葉という便利なものがあるんだ」と理解したのか、「カレーライス食べたい」等としゃべるようになりました。

初めての言葉

私は「単語を覚えさせるのではなく、こういう体験を積み重ねるしかないのだ」と悟りました。

英語だって英単語を山ほど知っていても、「外国人と話したい」という動機がなければ、英会話は上達しません。これと似ているように感じます。

■押し付けないで

自閉症の子は人への関心が少ないと言われています。息子も人見知りをするわけでもなく、人に喜んで近づくわけでもなく、人が近づいてきても相手が岩か石かと思っている素振りでした。更に周囲の人がやっていることに興味を持って真似ることはありませんでした。

言葉だけでなく遊びも同じです。

公園に連れて行っても「友達と遊びたい」という気持ちがなかったら、楽しそうに遊んでいる子ども達がいても、仲間に入らず地面の石を一列に並べるだけです。(石を並べることが友達と遊ぶより、本人にとっては楽しいのですから)

そんな周囲に関心のない時期に、無理して友達と関わらせようとしても、親子共にストレスがかかるだけ。

子どもも楽しくない上に、親だって周囲との違いを目にして辛い思いをするだけですから、無理して「公園デビュー」をする必要はないと思っています。

■今

椎茸が苦手な息子に椎茸を出すと「嫌だ」と言います。コミュニケーションとしては成り立っています。

また、私が「いってらっしゃい」と見送ると「いってらっしゃい」と手を挙げて玄関を出ていきます。

いってらっしゃい

オウム返しですがそこには「今から行ってきます」の気持ちが込められているので、それはそれで良いと思っています。

「こんにちは」「こんにちは」「さようなら」「さようなら」と繰り返すけれども、「行ってきます」「いってらしゃい」、「ただいま」「お帰りなさい」となる日本語は本人にとって難しいのではないでしょうか。

執筆者プロフィール

立石美津子(たていし みつこ)

20年間学習塾を経営、現在は著者・講演家として活動。『一人でできる子が育つテキトーかあさんのすすめ』『はずれ先生にあたったとき読む本』『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』など著書多数。『発達障害に生まれて(ノンフィクション)』のモデル

立石美津子(たていし みつこ)
Scroll